CHAMBER OF SECRETS
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その晩、アズサは私室からそろりと抜け出す。自身に目くらまし術をかければ頭の先からひやりとしたものが流れ落ちる感覚がした。
そうして医務室に続く廊下に身を潜める。
息を殺して。目線はひたすらに地面近くを見つめた。
1時間程しただろうか、静まりかえった廊下にシューシューという音が響いた。
[ころしてやる。ころすときがきた。]
ただそう繰り返す声が木霊する。
そこに1年生のコリン・クリービーが歩いてくる。
アズサは手を伸ばそうとして、引っ込める。
彼がカメラを構えなければ、アズサのせいで彼を殺してしまうことになるかもしれない。
クリービーは怪物に気づいたのか、立ち止まりカメラを構える。
それと同時に、怪物もこちらを向いた。
アズサの喉がひゅっと鳴る。
頭部は見ていないものの、スリザリンの怪物、蛇の王者バジリスクは、想像以上に大きかった。
目の前でクリービーは石となった。
アズサはバジリスクが立ち去るまでそこを動けない。塞がれたはずの足の傷が引きつった感覚がして、恐怖に身体が震えた。