CHAMBER OF SECRETS
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数日後。地下牢教室の冷たい空気に晒されながらアズサはゆっくりと身体を起こした。今は閉心術の訓練中だ。
「怪我は。」
『大丈夫です。』
およそ2ヶ月、心を閉じることは以前と比べ上手くなっており、スネイプの開心術も五分五分で跳ね除けることが出来ている。
「本日はここまでとする。」
スネイプは素っ気なく言うと、アズサにホットミルクを手渡した。閉心術を訓練した後にこれが出されるのはもう恒例となっていた。
『ありがとうございます。教授』
「ふん。ところで妙な話を聞いたのだが。」
スネイプの唇がゆったりと弧を描く。
これは明らかに良くない。アズサは彼の顔を直視しないようにしながら、『なんでしょう』と問うた。
「なんでも、ロックハートが急に授業で倒れたのだとか。」
スネイプの指先は、杖をなぞっていた。
「本人に聞くところによれば、何やらあまり覚えていないらしい。…Ms.ツキミヤは、その時教壇にいたとか?」
『えぇ…。ですが私はその時ロックハート、…先生のことをよく見ていなかったので。』
白々しい言い訳にスネイプはため息をついた。
彼とて、何が起こったかなど簡単に分かっていたことだ。
「盾の呪文にしては、やけに……悪意のある…否、どちらかといえば強力なものだと思うのだが。」
『え?そうでした?』
知っていると匂わせればアズサはころりと態度を変えた。我が寮らしく狡猾に育っている。一見それは彼女に似つかわしくないが、どこかそうであるのが自然にも思えた。
「あいつの呪文はおそらく正確ではない。
どうせ大した呪いではないだろうが、当たっていればどのようになっていたかわからんのでな。
正当防衛になるとはいえ、次からはもっと上手くやれ。」
『はい。教授。』
アズサの優等生然とした返事に、スネイプは満足げに頷いた。