CHAMBER OF SECRETS

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通常教員は夏季休暇のちょうど中頃に、1月程の休暇を取る。
しかしアズサがいたことで、スネイプは他の教員の帰ってきたこの時期に、しかも僅か一週間の休みをとるという。
迷惑をかけてしまったうえ、無言呪文もようやく使いこなせるようになったのだ。スネイプには足を向けて寝られないな、と静かになった地下牢教室でアズサは薄く笑った。

残されたアズサに課された課題は少ない。
新学期へ一息つく為の期間なのかもしれない。気分転換にハグリッドに会いにいこうかとアズサは地下牢からの長い階段を上り始めた。




「おや?まだ休暇中ではないのですか?」

10分後には気分転換など考えずじめじめとした陰気な地下牢引きこもり勉強生活を選択しなかったことをはやくも公開していた。

『アー……その、事情がありまして。先生?』
濃いブロンドの髪にブルーの瞳、ライラック色の派手なローブ。そして何より胡散臭い微笑み。

「私としたことが!貴女の可愛らしさに名乗ることを忘れていましたよ、私はギルデロイ・ロックハート。
新学期から闇の魔術に対する防衛術の教師として招かれたのでね。
レディ、貴女の名前をお聞かせ願えますか?」

『アズサ・ツキミヤです。先生。訳あってホグワーツで暮らしています。』
彼は2人の間のテンションの違いに全く気付かないのか、愛想笑いを浮かべるアズサに嬉しそうに微笑みかけた。

「アズサ。東洋のお方ですね?嗚呼、照れないで。いくら私が週間魔女チャーミングスマイル賞を受賞した有名人であっても、」
「ギルデロイ。そこで何をしているのですか。会議の時間ですよ。」

久しぶりに聞いた威厳のある声に振り向けば、マクゴナガルが立っている。

「そうでした。今から向かいますよ。…では小さなレディ。また逢えることを願っていますよ。」

鳥肌が立ちそうなウインクを残して去っていったロックハートにアズサはため息をついた。
1年間耐えられるのだろうかと。

「アズサ。大丈夫ですか?」
先ほどとは一転して心配そうな顔になったマクゴナガルにアズサは慌てて顔を上げた。
『ありがとうございます、先生。少しばかり、出会ったことのないタイプの先生でしたので。』

「ええ。勿論そのこともですが、勉学に励んでいるそうですね。無理をしすぎてはいけませんよ。」

母の顔だと、アズサは思った。
覚えてすらないが、母の慈愛に満ちた顔だと。

『ありがとうございます。気をつけます。』
「ええ。では私も職員会議に向かいますので。」

にっこりと微笑んでから去っていったマクゴナガルの後ろ姿を見送ってから、アズサはやはりハグリッドは今度にして地下牢教室に戻ろうと、元来た道を戻り始めた。



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