兎さんとの甘い時間
□病院
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目が覚めると見慣れない天井だった。
白い天井、淡いクリーム色のカーテン、独特で鼻につく薬品の匂い。
(あぁ、病院か…。あれ、なんで病院?)
別に怪我をしているわけではなさそうだ。強いて言えば少し頭が痛い気がする。
もちろん持病があるわけでもない。超健康優良児である。
(えっと…たしか、あぁそうだ、海に行ったんだ。)
そう、私は溺れたのだ。
高校生になって初めての夏休み、アキと海に行って、
突然の渦潮に巻き込まれた。
地元の海だったから油断していた。
いつもは湖かと錯覚するほど穏やかな海が自然の牙を私に向けたのだ。
地元だし、と思って着て来たTシャツと短パンが重い。
渦巻く潮の流れにどんなに抵抗しても
下へ
下へ
引き込まれていくだけだった。
(あ、もうダメだ。)
死を覚悟し、流れに身を任せることにした。
不思議と楽になっていった。
激しい渦の中であるのも忘れて、
穏やかな海の中を
ただ浮いているだけのような感覚となった。
アキの声が遠くのほうで聞こえる。
(覚えているのはここまで…ここで意識が切れたんだろうな)
誰かが助けてくれたのだろうか。
だとしたら病院も説明がつく。
(ここどこの病院かな。お母さんもお父さんもアキも心配してるだろうな)
??「~~~」