短編1

□何だかんだで幸せです
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(影山が三年生、名前が社会人)


あの人と何年も会ってない…




突拍子にそんなことを思った


俺はもう高3
あの人は社会人になって 2年くらいか…?


今までコート上の王様と呼ばれてた俺も

『トゲトゲしくなくなったな』とチームメイトだった奴等に言われた

「そこまで酷かったのか?」って思うくらいに…
俺には心当たりねぇーけど



たぶん…いや絶対に俺がそんなにもトゲトゲしくなくなったのはあの人と付き合ったからだと思う

元チームメイトだったあの人には自然と想いを寄せていた
あの人の隣にずっと居たいって思ったから、告白したらオーケーもらって…
(あんときは柄にもなく嬉しくて泣いちまったけど…)

あの人の側に居るだけで心が安らいだ。安心した
でも学年が違うからずっと一緒ってな訳にはいかなくて、あの人は先に社会人という大人の世界に入っていった


大人の世界は高校とは全然違くて、忙しそうだった

忙しくなれば会えなくなるのが当然
そうなると俺の中の我儘な部分が出てきて

【ずっと一緒に居たい】と思ってしまう

そんなんじゃいけないと思うけど、心は寂しく感じる。

そんな俺の思いを知ってか知らずかあの人はほんの少しの時間を作って電話してきてくれたり、たまに会いに来てくれたりする
でもしっかりと話をしたのはだいぶ前のこと




「あの人に会いてぇ」

そう呟きながら校門を出たとき


『お前……飛雄?』

名前を呼ばれ振り向けばサングラスをかけた男の人

「そーっすけど…あんた誰すか?」

『えっ!?もう忘れたのっ!?』


どこかで聞いたことのある声

どこか懐かしい声


『あ!?サングラスかけてるからわかんねーのか?』


「……ハイ………」


アレ?この感じ及川さんみたい…

でも違う
及川さんとは違う独特の雰囲気
口調、見た目、声……


『わりぃな』

そう言ってサングラスを取ったその人の顔を見た


「!!!!!?」

『覚えてるか?俺のこと…』

「あ、ぁぁあ…」

『覚えてるみたいだな』

「名前さんっ!」


『久しぶり』



ニカって効果音が付きそうなくらいの笑顔


今、一番見たかった顔
聞きたかった声



「名前さんっ!!」

飛びついて抱きついた


『うおっ?!』

体勢はやや崩したけど、俺とは体つきが全然違うから俺が飛びついても転ぶことは無かった


『危ねぇーだろ!!』

「名前さんっ!!!」


柄にもないくらい子供のようにすがりついた


今、







一番会いたかった人

姿を見たかった人



声を聞きたかった人



肌の温もりを感じたかった人



『年取って外見は成長したのに、内面は幼ねぇーな』


「だって……」


『悪い悪い。俺もだいぶお前のこと放っておいたからな』


「…………」


『ただいま、飛雄』

「おかえりなさい名前さん」



そんな言葉を交わしたあと

名前さんの顔が近づいてきたから
そっと目を閉じれば

すぐに唇に暖かい感触


あぁ、名前さんの唇だ


名前さんの温もりだ




そして

チュッっというリップ音と共に唇が離れていった


「……ここ校門っす」


『飛雄も乗り気だったじゃん♪』

「/////!?」


『でさ、このあとどうする?』

「このあと?」

『うん、今日から一週間、休暇もらったんだ』

「一週間っすか…」

『うん、どこか行く』


「じゃあ…」


『うん?』





「名前さんの家がいいっす」

『!!?/////』



お預けくらった分っすよ



『素直になったな飛雄♪』

「そ、そっちの方での意味じゃないっすからね!!////」


『そっちってどっち?♪』

「なっ!!/////」

『飛雄ったらイヤラシい♪』


「!!!!!//////

名前さんっ!」


『アハハハ!まぁ、飛雄の要望に応えて、俺んちいきんますか♪』

「うぅぅ…////」





おれ、何だかんだで 幸せです







































『今日、寝れねーぞ

つーか、寝せねぇからな』



名前さんにそんなことを言われたのは

また別のお話…
 

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