ハイスクールD×A 鋼翼の反逆者

□停止教室のヴァンパイア
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「今日は私達限定のプール開き、気合入れて磨くわよ!」

「おっしゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 登校する時は何処か疲れた様子だった一誠がリアスの言葉に元気良く雄叫びにも似た叫びで答える。その日はプールの日、プール掃除を条件にオカルト研が優先的に使って良い事になっている。

「それで、なんでお前達まで居るんだよ?」

「いや、ソーナ会長に頼まれてな」

 生徒会側の参加者の代理と言う事で勇気とゼノヴィアのライディーンチームも参加となった訳だ。……実際にはリアス達の事も手助けして欲しいと、サーゼクスから依頼されたと言う面もある。

「序でに、|そっち《オカルト研究部》との交流も兼ねて、らしいな」

 まあ、試合で助っ人を頼まれればソーナ達の方を優先するが。

「つー訳だ、宜しく頼むぜ、赤龍帝」

「……いや、なんか、ドライグが脅えてるんだけど」

 流石に過去の敗北が少々トラウマになっていたらしい。

(まあいいか、勇気も手伝ってくれるなら早く終わるし……何より)

 『今度のプールで見せてあげるわね』と言う言葉と共に一誠の脳裏に浮かび上がる以前の光景。

(部長の水着! 朱乃さんの水着も楽しみだ! オレはこの日の為に生きて来たんだ!)

 一誠の脳裏に浮かび上がる妄想と共にプールに飛び込み、

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」

 煩悩全開と言った様子で咆哮しながらブラシで磨き始める。

「滑り易い所で走ると危ないぞ」

「って、勇気! お前、何自分だけ楽してんだよ!?」

「飛行の訓練を兼ねてるって言ってくれ」

 何時の間にやら一誠と同じ速度で少し浮きながら磨いている勇気。……背中の翼で低空を飛行しつつ磨いていると言う訳だが……。そんな一誠に対して、とある二人のコメント。

「……イッセーさん」

「……エッチな事を考えていますね」

 アーシアと小猫のコメントである。……その際の一誠に対する二人の表情については、ノーコメントとしておこう。

 勇気もそんな一誠に呆れながらも低空飛行での訓練も兼ねて高速で飛行しながら磨いているが、本人にしてみれば寧ろ普通に磨いた方が楽だ。速度の制御には神経を使い、空を飛ぶのは結構疲れるらしい。なお、ライディーンになりたてのゼノヴィアの飛行訓練は、割とスパルタで行なわれたとか。

 そもそも、先代の記憶を告いだ影響か、勇気は両足で歩く感覚で空を飛べるが、残念ながらゼノヴィアの場合最初は浮かぶ事も出来なかったとか。
 ……まあ、飛行については流石に上空から落とした事で一度で成功した辺り、彼女には才能は有ったらしい。それでも、感覚が掴めずゼノヴィアの場合は教習所の運転初日とのドライバーの運転する車と同じ様なものであったと言って置こう。飛行する感覚……スピードの調整がかなり難しいらしい。

「我がブラシに……落とせぬ汚れ、無し」

「お前、もうちょっと真面目にやれよ!!!」

「あははは……」

 まあ、流石に疲れたら飛ぶのは止めて普通に掃除し始めたが……。そうなったら一誠のテンションに着いて行けず、少し手を抜き始めた。そんな訳で主に一誠の周囲が呆れるほどの必死なプール掃除によって、予定より早く終わった結果……




(拝啓、天国のお爺様へ。初夏となりました。らんらんと輝く太陽は暖かな光景を届けてくれますオレは眼前の光景に)

「あっ、悪い」

「うぎゃぁー!!!」

 プールに浮いていたゴミを分別しつつ、その中の燃えるゴミをイーグルフレアで焼却していた勇気の手元が狂い、眼前の光景に感涙していた一誠に直撃して吹飛ばされてプールに沈んでいく。
 後に彼は語る。内心『もう死んでも良い』等と考えていた一誠だったが、本気でその時は死ぬ思いだったそうだ。

 らんらんと太陽の陽射しで肌を焼くのではなく、灼熱の業火で全身を焼かれかけたのだから無理もない。

「……お、おーい、生きてるか?」

 流石に心配になった勇気が声をかけるがプールに浮かんでいた一誠が飛び上がり、

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!! この日の為に今まで生きてきたんだ、気絶なんてしてたまるかぁ!!!」

「随分お前の今までの人生って安いんだな」

 腕を突上げながらそんな咆哮を上げる一誠に対して勇気は呆れた眼を向けている。……流石にダメージは有ったらしく、アーシアの神器に癒して貰ってはいるが。
 回復した一誠に水着の感想を聞いているアーシアと小猫の二人……小猫の場合は卑猥な目で見られないのも複雑な気分だそうだ。……乙女心は複雑なものである。

「で、お前はどうなんだよ?」

「どう、って?」

「部長と朱乃さんと、アーシアと小猫ちゃんの誰の水着姿が最高かって事だよ!?」

 力説しながら問いかけてくる一誠に軽く溜息を吐きつつ、勇気は

「そんな物決まってるだろう。『好きな相手の水着姿』が一番に決まっている。そうじゃなければ、所詮二番目だ」

 『ビシッ!』と擬音が着きそうな勢いで一誠を指差しながら宣言する勇気に、『そうだったのか』とでも言う様な様子で衝撃を受ける女性陣と、苦笑を浮べている木場……そして、反論すべきかどうかでフリーズしている一誠。
 此処で一誠としては後に彼の代名詞となる言葉で反論したいだろうが、それは出来なかった。……流石に愛情よりもそっちの方が上などとは言えない。

 勇気と一誠の水着論議は兎も角……勇気とグレモリー眷属との会合としてはそこそこ上手く行ったプール掃除だとは思う。
 その後、一誠が小猫とアーシアの泳ぎを見たり、リアスと朱乃が一誠を取り合ったりと、妙な争いが起こっている中、巻き込まれないうちに用具室に行った勇気だったが……。



「改めて言う、抱いてくれ。子作りの過程をちゃんとしてくれれば隙にしてくれて構わない」

「お、おい……だからお前は少しは冷静になってくれ!」

 半裸のゼノヴィアに現在進行形で押し倒された勇気だった。薄っすらと光を通して見えるライディーンの翼……僅かながらに身体能力の上がる半変身形態と言うべき状態で押し倒されているのだから今の勇気では振り払えない。

「心配ない、私は冷静だ」

「いや、だから……」

 ゆっくりと近付いてくる彼女の顔に真っ赤になって落ち着かせようとする勇気。改めて何故こんな事になったのかと半ば現実逃避気味に考えてしまう。
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