ハイスクールD×A 鋼翼の反逆者

□停止教室のヴァンパイア
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「別に良いぞ」

「良いのか?」

「アザゼルだけなら二人掛かりなら戦えるだろうけど、白龍皇がセットとなるとな」

「確かに」

 勇気の判断に疑問を浮べるゼノヴィアだが、流石に今の勇気は先代のイーグル程力を使いこなしていると思っていない。それでも、ゼノヴィアと一緒に戦えば戦えはするだろう。だが、そこに白龍皇が加わるとなると話しは別だ。

(『白い龍《バニシング・ドラゴン》』……既に完全な|禁手《バランス・ブレイク》状態だった。現時点じゃ圧倒的にオレの方が弱い。何時か戦うことになる存在、白龍皇アルビオン、次に出会うまでに少しでも差を埋めなければ……)

「確実に死んで終わりだろうな」

 一誠が己の宿敵となるべき相手の事を考えていると、そんな彼の考えを呼んでいる様に勇気がそう呟く。

「って、おい!」

「分かり易いぞ、考えてる事。ところで、アルビオンは堕天使側なのか?」

 一誠の言葉に答えつつ勇気はゼノヴィアに問いかける。元々天使側の所属だった彼女なら、少しはアルビオンの事を知っているかと思ったからだ。
 オリジナルの白龍皇アルビオンの事も残念ながら勇気の中にある先代イーグルの記憶の中にも詳しくは存在して居ない。そもそも、アルビオンと戦ったのはイーグルではなく『ライディーンクロウ』の方だ。

「そうだ。アザゼルは|神器《セイクリッド・ギア》所有者を集めている。『白い龍《バニシング・ドラゴン》』はその中でもトップクラスの使い手。『|神の子を見張る者《グレゴリ》』の幹部を含めた強者の中でも四番目か五番目に強いと聞く」

「最低でも五番目か……」

「だが、伝説の戦闘天使のリーダー……その中でも一騎打ちで二天龍を倒したといわれる君なら負けないだろう?」

「いや、流石に先代と同等、なんて言えないからな。まあ、白龍皇は確実に今の一誠じゃ負けるレベルか」

 内心で戦闘狂いみたいな事を言っていたから、興味は自分に移っているだろうと思っているが、一応そう忠告しておく。……神器所有者としての経験の差も有るだろうが、あの時出会った白龍皇にはまだ何か、一誠との間にある大きな差と言うべき“才能”の根底にある物が有ると思えてならない。

「なんか……お前がそう言うと本気で不安になるな」

「大丈夫だよ」

「えっ?」

 目の前でコカビエルを倒した勇気が弱気な発言をしていると本気で不安を覚える一誠。だが、そんな彼に木場が声を掛ける。

「僕がイッセーくんを守るからね」

「うわぁ……」

 胸を叩きながらの木場の発言に引き気味の勇気……。普通は異性に言うべき台詞だろうと思うが……何時だったか、クラスの女子の間でこの二人の同性愛疑惑が持ち上がっていたのが思い出される。

「いや、あの、うれしいけどさ……。なんて言うか、魔顔でそんな事を男に言われると反応に困るぞ……」

「笑えば良いと思うぞ」

「なんでだよ!」

 とりあえず、適当な事を言って視線をそらす勇気。誰だってそんな物に巻き込まれたくない。自分に矛先が向く前に、さっさと収まるべき所に収まってくれと思う。

「あはは、酷いな。イッセー君は僕を助けてくれた僕の大事な仲間だ。仲間の危機を救わないでグレモリー眷属の『|騎士《ナイト》』は名乗れないさ」

(なるほど、そう言う事か)

 木場の言葉を聞きながら先ほどの考えを心の中で謝罪する。

「……ふふ、少し前まではこんな暑苦しい事を口にするタイプではなかったのに。君と付き合っていると心構えも変わってしまう。けれど、それがイヤじゃないのは何故だろう」



―ゾク―
―ピシッ―



 頬を赤らめてそう言う木場に背筋に寒いものが奔る一誠と、直接言葉を向けられているわ蹴れでは無いが明らかに同性愛な発言に石化する勇気。そして、思いっきり心の中の考えを撤回する。

「胸の辺りが熱いんだ」

 全力で木場から距離を取る勇気。……そんな感情を向けられているのが自分では無く一誠だが、流石に引く。

「……き、キモいぞ、お前……。ち、近寄るな!」

「そ、そんな、イッセーくん」

 そう言って逃げる一誠の進行方向には勇気の姿が。

「そ、そんなこというものじゃないぞ。仲間なんだからさー」

 思いっきり棒読みな言葉で一誠を木場の方へと押し返す勇気。……流石に同性愛疑惑が湧きそうな台詞を言うのは当人同士の勝手だが、なるべく近くで言わないでほしい。

「しかし、どうしたものかしら……あちらの動きが分からない以上、此方も動きづらいわ」

「だったら部長さん、偶然を装ってオレが接触しようか?」

「確かに貴方なら十分に対応できるかもしれないけど、相手は堕天使の総督、下手に接する事も出来ないわね」

 それだけではなく、流石に自分達の領土で協力関係とは言え、他勢力の者に対応させたとなってはこの地の管理を任されているものとしてどうかと思うが。
 どうも先代イーグルの記憶の中にあるアザゼルの性格を考えると、特別此方を害する事を考えていると言う訳では無さそうだが、


『アザゼルは昔からああいう男だよ、リアス』


 そんな第三者の声が響いた。その声に反応して全員の視線が其方へと向かう。その中でも、リアス、朱乃、木場、小猫と言った一誠よりも前に眷属になった者性質の表情には驚愕の感情が浮かんでいる。

「アザゼルはコカビエルの様な事はしないよ。今回みたいな悪戯はするだろうけどね。しかし、総督殿は予定よりも早い来日だな」

(予定?)

 其処に居たのは銀髪のメイドさんを従えた赤い髪の男性……。

(わっ、スゲー美人。それにしても、赤い髪か……部長さんの身内か?)

 流石に男の子、男性よりも美人な女性に視線が行くのは男の性だろう……。だが、直ぐに意識を声の主へと切り替える。そんな勇気に微かに不機嫌な色を見せるゼノヴィアと……病院で眠っているはずの歌姫様。

「お、お兄様!?」

「お兄様って事は……この人が四大魔王の一角、『サーゼクス・ルシファー』」

 リアスの眷属一同が慌てて頭を下げる。それに対して勇気とゼノヴィアには緊張が走る。ライディーンが今の展開とは関係ないとは言え、元は天使……仮にも悪魔のトップを目の前にすれば警戒せずには居られない。

「君があのライディーンイーグルの後継者かい?」

「ええ、始めまして、魔王様。一応『二代目ライディーンイーグル』となる、鳳勇気と言います」

 そう言って一礼する。流石に敵対しても勝てるかと疑問に思える相手を前にしては警戒するだけ馬鹿らしいと割り切ってしまう。

「なるほど……どこか、あの時に見た彼の面影が有る」

 そんな勇気の顔を見ながらサーゼクスは何処か懐かしむように呟く。
 赤龍帝ドライグとの壮絶な一騎打ちを制し、神による封印へと導いた二組の戦闘天使達のリーダーの一人。天界の勇者と謡われたほどの戦士の後継者の姿に対し、何か思うところが有るのだろう。

「出来れば、彼とも平和な時に話してみたかったものだ」

 誰にも聞こえないほど小さく、サーゼクスはそう小さく呟くのだった。
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