ハイスクールD×A 鋼翼の反逆者
□停止教室のヴァンパイア
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「それで、貴方は一対何者なの……?」
翌日の学校……時は放課後、勇気は思いっきりオカルト研究部の部室でリアスに問い詰められていた。
まあ、内容は昨日のコカビエルとの一件だろう。神を殺した張本人だったり、自分達が手も足も出なかったコカビエルを(神殺しと堕天免除の特権の)ショックが合ったとは言え一方的に勝利した事に対する事等色々な事に対しての質問だろう。
「かつての天使族の勇者にして最悪の反逆者、戦闘天使ライディーンの後継者になった人間」
簡潔すぎる答えで、全部既知の事だ。実際、コカビエルを倒し、白龍皇が去ってイーグルが飛び去った後……木場に対する尻叩き千回が終った後に到着した魔王にリアス達はライディーンが何者なのかは聞いている。
……なお、タイミングの問題で生徒会の方には今朝の内に既に説明済みだったりする。重ねて言おう……会長の方には世話になっているのだ、色々と。
「……貴方、人間よね?」
「ええ。オレの|神器《セイクリッド・ギア》、|反逆の天使達の翼《ライディーン・フェザーズ》に封じられているライディーンの力と知識を受け継いで……」
そう言って後ろから勇気を睨んでいる一誠を一瞥して彼を指差して、
「あいつが神器の影響で元人間の転生悪魔であると同時にドラゴンでもある様に、オレも人間であると同時に天使でもあるって所だな」
超者降臨によってライディーンに変身した姿はどちらかと言えば|禁手《バランス・ブレイク》に近いらしい。付け加えて言えば、勇気の持つ神器は聖書の神が生み出したモノでは無く、神を討った後にライディーン達が神器の設計図に当たる物を元に、“ある物”を自分達諸共封印する為に作り出したもので、色々と本来の神器とは多くの差異が有る。
実は|反逆の天使達の翼《ライディーン・フェザーズ》の能力はそれだけでは無いのだが、そこまで言う必要は無いだろう。
「本当に神を殺した神器なんて……本当の意味での|神滅具《ロンギヌス》ね」
「んー……イーグルの知識に寄れば、イーグルがカミサマ殺したのは丁度|神滅具《ロンギヌス》が出来た後だったらしいけどな」
そこまで言った後再び一誠へと視線を向けて苦笑を浮べる。
「本来、|神滅具《ロンギヌス》なんて物騒な名前を与えられているけど、本来の役割はもっとたちが悪い代物だったらしいな……」
「……何処まで知っているの?」
「先代イーグルの知っている知識だけ……。分かり易く言えば先代イーグルの『記憶』を図書館の本の様に閲覧できる感覚だな」
その中には|神滅具《ロンギヌス》を作り出した(本作に於ける)理由も存在していた。思い浮かべるのは、一つのイメージ。イメージだけの最悪のビジョン。ゴッドライディーンと無限と夢幻の剣と盾。宇宙を滅ぼす力を秘めた翼を持つ巨人と最強の力を秘めた剣と盾……それを操る神によって管理される世界。
|神滅具《ロンギヌス》はその世界に於いて人間に与えて自らの代行者として人を支配させる為の道具。
そして、堕天使や悪魔はライディーンが神の代行として管理する。
それが、イーグルの手によって討った神の考えていた“完璧な世界”のビジョンだった。
「教えて貰えるかしら?」
「NOだ。あんまり知りすぎるのも良くないと思いますよ、先輩」
知った所で計画していた張本人が死んだ今、なそうとしていた一種の悪行を暴露する必要もないだろうと言う判断だ。自分も当事者である先代イーグルでは無い上に、相手の死後に言い触らす趣味は無いのだ。
何より、下手をしたら自分達の存在を消してまでも封印したかった『ゴッドライディーン』の存在も教える必要が有る為に、神の死の真相は……イーグルが殺した事以外には同じライディーン以外には何者にも教えるべきではないと認識している。
相手が何者であっても、だ。寧ろ、ゴッドライディーンの事を考えると絶対に教えないほうが良いだろう。
リアスも何か言いたそうだが何も言えずに居た。はっきり言って自分達が手も足も出なかったコカビエルを倒した相手、そして教会の聖剣使いであるゼノヴィアも居らず……相手が敵対する気なら昨夜のコカビエルの時以上に絶望的だろう。
「で、何か言いたそうだな……赤龍帝?」
そう言って先程から己を睨んでいる一誠のほうへと視線を向けてそう問いかける。
「昨日言ってた、堕天しないとか、特権とかってどう言う意味だよ!?」
「ライディーン達が強いから。敵に回したら自分達が負けるほどに……な」
簡潔に言い切る。堕天した天使の行きつく先は天界の敵、戦闘に特化した天使であるが故に神のシステムからの例外とされていた。
「要するに、だ。神の死の手掛かりになる得るものはすべて異分子として排除する。……天界の|狗《天使》達の考えそうな事だ」
「一応、自分も天使なのに随分と酷い言い様ね」
吐き捨てる様に言い切る勇気にリアスはそんな疑問の声を向ける。
「天使って言っても、オレのは一割程度……主成分は人間だ。それに……《神様〜》って言って思考停止してた連中とは、先代達も折り合いが悪かったらしいからな。所詮、自由に天空を舞う事を愛する鳥と、人に飼われる事を好んだ飼い犬じゃ、考え方が合わないのも当然だろ?」
そう言って首を振る勇気の姿にリアスは思わず頭を抱えてしまう。……かつての大戦の中で『天界の勇者』と謡われたライディーン。
そんなビックネームが後継者とは言え自分の領地……所か同じ学校で後輩に居たのにも気付かなかったのだから。唯一の救いは何度も彼が言っている『九割は人間』と言う点くらいだろう。
「まあ、簡潔に言うと、オレは聖書の神の死の真相を含めて、全てを『知識として』知っていると言うことくらいだな」
実行犯の記憶を受け継いでるんだから当然の話だ。悪魔SIDEとしては聖書の神の死の真相は知りたい事柄だが、知っている相手は……コカビエルを倒したライディーン。力尽くで、と言う手段は考えるだけ危険だろう。
「それで、こっちからも聞きたいんだけど……堕天使の幹部相手に聖剣使い二人しか派遣してなかった、お目出度い頭のボス狗は何て言ってる?」
どうも天使側の行動を知れば知るほど嫌悪と言う感情が浮かぶ。……一応気をつけているが、同類嫌悪に近い感情だろう……一割ほどの。
「天使、と言うよりも教会は今回の事で、悪魔側……つまり魔王に打診してきたそうよ。『堕天使の動きが不透明で不誠実のため遺憾ではあるが、連絡を取り合いたい』と」
(確かに……二度も部下が魔王の妹の治めている土地に入り込んでる時点で、次の戦争の引き金を引きたいのかって思われても当然だな。……にしても)
ふと、視線がリアスの方へと向く。見とれているとかそう言う意味では無く……
(もしかして、この人……舐められてる?)
そう言う結論に行き着いてしまう。まあ、その思考で生徒会長の方を考えないのは、直接戦闘に向いていると思ってないからだろう。寧ろ彼女の場合は頭脳労働の方が得意分野だろうし。そんな事から迎え撃つ側のリアス達が舐められているのでは、と言う考えにいたる。
「どうしたの?」
「いや、別に」
彼の視線をどう言う風に考えたのかは分からないが微笑を浮べて問いかけてくるリアスに、かなり酷い事を考えていたという自覚が有るだけに慌てて視線を逸らす勇気。傍から見れば誤解を生む態度だろう。
『それと、バルパーの件についても過去に逃した事に関して自分達にも非が有ると謝罪してきました』
そう言いながら『匙 元太郎』を伴ってオカルト研究部の部室に入ってきたのは生徒会長の『支取 蒼那』……正しくは現魔王の一人『セラフォルー・レヴィアタン』の妹の『ソーナ・シトリー』と言うべきだろうか。
「……あっ、生徒会長さん」
「ソーナ会長、匙、今朝振り」
そんな彼女達の姿に気付いて挨拶するアーシアと勇気。だが、続いて入って来た相手に一誠とアーシアの表情が驚愕に染まる。
「やあ、赤龍帝」
「ゼノヴィア!? なっ……なんでお前が此処に!?」
「あー……無事に転校できたんだな」
「ああ。神が居ないと知ったんでね。破れかぶれでライディーンの仲間になることにした」
「そっ、オレの仲間になってくれるらしい」
「「ええええええええええええええええ!?」」
「まあ、オレの神器、ライディーン・フェザーズは適合者の居ない十人のライディーンのゴッドフェザーも内包している。……適合者でも気を失う程の苦痛に耐えられれば新たなライディーンになれる」
『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!』
そこで再び絶叫が上がる。……全員が絶叫した時点でゼノヴィアが勇気の仲間に成ったと言うこと以上に驚きは大きい様子だ。
一度に全員の適合者が現れないのは封印のための処置だが、それでもライディーンの力を必要とする自体は起こりうる。これに関してはその為の処置だ。
「まあ、今世でライディーンの正式な後継者は……オレ以外に一人だけの様子だな」
そう言った勇気の手の中に現れる輪を描くように存在する|反逆の天使達の羽《ライディーン・フェザーズ》を構成する八枚の羽……ゴッド・フェザー。