月刊少女野崎くん
□戦利品(幼なじみ)
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なんとしても手に入れたい!
その気持ちに変わりはない
一方的とも言える条件を、仕方なく呑むことにした
「う、…欲しい!」
「じゃ、宜しく頼む」
ここまで来たら、形振りかまっていられなかった
「う、うん…あのね、声だよ!梅ちゃんの声が…『重厚な艶のある低音』で胸に響くような、心地良さがあるの…そこが婀娜っぽいというか、梅ちゃんの魅力かな?」
「………!!」
「………?」
「……声だと?」
「う、うん!?」
途端に梅ちゃんが、頭を抱える
な、ななんで!?
こっちは、恥を忍んで言ったのに…
「声じゃダメだ、夏帆。」
「え、何で?」
「漫画じゃ、全く伝わらない!!」
悔しそうに梅ちゃんが鉛筆とノートを放り投げた
「しっ、知らないよッ…!(バリトンボイス)とかって、説明書いときゃいーじゃん!」
ちくしょー…これじゃ、言い損だ
幼なじみを前にして、こっ恥ずかしいこと言ったのに!!
ただ、好きな人と同じものを持ちたくて、梅ちゃんに頼んだ
私も同じ物が欲しいと…
お揃い…に憧れてた
そんな乙女心は誰にでもあるはず
たかがT シャツ
されどT シャツ
先輩とペアルックになりたいが為に
私は羞恥と戦った
それは…
とても、無駄で無意味な戦いであったが…
結果、私は…
『〆切りは待ってくれない』Tシャツを、ようやく手に入れた!
もはや、戦利品である
14*12*12
END