月刊少女野崎くん

□不意討ちキスじゃ奪えない
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暫くたって先輩が戻ってきた


「ごめんな、夏帆。もう大丈夫だから」                         

椅子に座りながら、ポンと優しく頭を撫でられたら

それだけでキュンと胸がいっぱいになる私は単純で…


扱い方をよく知っている先輩は、狡いよ




「ん?夏帆?全然、問題やってないだろ!」


広げたノートをチェックして、眉を潜めた先輩の表情は険しくて、今度はギクリとする



先輩、目敏いです




「ただただ、ずっと…先輩を待ってただけです

一緒にいたかっただけなのに!

先輩は、直ぐに居なくなる!」


この際、勉強なんてどうだっていい

なんだか無性に反発したい、先輩を困らせたくなった



「それは、悪かったけど、今は勉強だろ?」

至極真っ当に、諭すような先輩の口調


「先輩は、間違ってないです」

正論には勝てなくて悔しかった



視線の先…


先輩の胸のポケットに収まっているネクタイの先がハラリと落ちたから

チャンスだと思った


ブルーのネクタイをクイっと引き寄せて、バランスを崩した先輩に




不意討ちのキス





"もう、どこにも行かないで?"



先輩を奪いたくて

ほんの一瞬の

唇が触れるか触れないか、くらいの淡いものだった


「んッ!」


驚いた表情の先輩は可愛かった


勿論、誰にも気付かれないように、死角に入る所を(先輩がいない間)考えてたからバレてない



してやったり!

な気持ちで満足した私に、先輩からの報復はビシッとストレートにヒットした、華麗なデコピンだった


「う、痛い〜っ…。」



思わず、おでこを押さえて悶絶する




「堀先輩、探しました。」


んッ!また!!誰か来た


涙目で見上げれば、先輩を探していたのは梅ちゃんだった


「どうした、野崎?」


「台本の件で少し…てか、なんで夏帆は悶えてるんだ?」



「ん?勉強サボったお仕置きだ、気にするな野崎」



先輩は笑顔で答えると、不思議そうに私と先輩を交互に見ている梅ちゃんを連れて図書館を出て行った



梅ちゃんにまで、先輩を取られるなんて!!



不意討ちキスじゃ奪えない

(真っ向勝負しても奪えないよ)






そうして、あとで寂しくなって…

「ごめんね」って言うと

「俺も、ごめんな」って言う


こだまでしょうか?

いいえ、誰でも…



(おい、夏帆!最後の部分はおかしいだろ?ソレ!!)



END
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