名探偵コナン

□春風
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どうやら、今日の夏帆は不調らしい。

所謂、花粉症ってやつだ。

「昨年まではそんなに酷い症状ではなかったのに…」と、買い物の帰り道を一緒に歩きながら、口数少なめに夏帆が語った。

ここ2、3日の気温上昇とともに花粉の飛散が増えたのが原因か、一気に悪化をたどり「今年は辛いです」と、鼻を啜った。

「…ぶぇっくし!」

「”Bless you.”」

「さん、きゅ……っえっくし!はぁ…………。あかいしゃん、ひぬ…」

鼻声に涙目の夏帆を見て、大丈夫か?なんて軽く言葉を掛けたが、大丈夫ではないな。
手厚く面倒をみてやろう。空調を整えて……。確か鼻炎薬も買い置きがあったはずだ。

「夏帆、家に帰ったら薬を飲むか?」

話すのも億劫そうに夏帆は、こくんと頷いた。

「花粉症で、そう簡単には死なないから安心しろ。ほら、」

「ふぇい…」

軽く頭を撫でてから、然り気無く手を差し出すと、夏帆は嬉しそうに自分の指を絡ませたのだが、くしゃみの度に手は離れる。

「ふぇっくし!」

何度目かも分からない…夏帆がくしゃみをした後で、ふわっと、足元から舞い上がった風が夏帆のフレアスカートを、悪戯にヒラヒラと撫でていった。

チラリと偶然に見えた薄い水色のレースのソレ…。
ほぉー。コレが"みせぱん"なのか?

「”Bless you.”(Oh……my god)」

マスクをつけ直している夏帆は、ほんの一瞬の出来事に気が付いていないようで、軽くスカートの裾を払う仕草をしただけだった。

気まぐれに吹く緩い春風が…花粉と共に思わぬラッキースケベを運んできた!と、心が叫びたがっているが…我慢する。
この際、過失の割合なんてどうでもいい。

「う、夏帆…。花粉症が治まったら、お礼に食べたがっていたポアロの特製苺パフェをご馳走しよう。
さぁ、身体を冷やす前に車に乗ろう。駐車場まで、あと少しだ」

「へ?……お礼?」

突然の申し出に、夏帆は意図が分からずキョトンとして、立ち竦むだけだった。


END


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