名探偵コナン

□独占欲
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自分でも、口走った言葉は、一段と低く冷たさを感じた。元カレだってことくらい、察しはついているのに。
俺は、これ以上夏帆から何を聞き出したい?
冷静さ、なんてとっくに失って、じっ…と夏帆を見つめている俺は。

夏帆の昔の男の影に、嫉妬した

赤井さん?呼ばれてから、気が付ついた。縋りつくように首に回された腕と、フワリと鼻を掠めた夏帆の香り。
じんわりと伝わる体温に優しく包まれる。
たまには、抱きしめられるのも悪くないものだと、夏帆の背中に腕を回した。

「ふふっ。嬉しい」

「何が…?」

「だって、赤井さん…ヤキモチやいてくれたでしょう?滅多にみられないもん。」

クスクスと笑みを溢して夏帆が耳元で囁いた。
いつも、俺がするように優しくどこか悪戯っぽく、真似てみせる。

「大地は、元カレだけど…。特別なんだ。
初カレなの。っていっても高校の時のハナシだよ?大学は別々になって…それからは、自然消滅に近かったかな?
自分の夢を追いかけるのに頑張ってた人だったから…。その夢を叶えたって聞いたら、思わず喜んじゃった」

思い出を語る口調でありながら、それでも"特別"などと言われたら、やはり心境は複雑だった。

「俺だって、ヤキモチくらい妬くよ」

初カレ…、ね。

どう頑張っても俺は夏帆の初カレにはなれない。
すっかり自分のことは棚に上げていたが、過去を思い出せば、それなりの出会いと別れはあった。
そうしてお互いに、"今"がある。
それくらい、俺だって分かっている。

「夏帆の過去よりも…手に入れたいのは、今……と。この先もずっとだからな」

どうやら、俺は独占欲が強いらしい。
例え、過去の男だろうと、誰にも渡したくはない。
この可愛い恋人を、一生繋ぎ止める術があるのなら、そうしたいくらいだ。

すっぽりと俺の胸の中で収まり、安らぎを得た夏帆を、愛しさを込めてギュッと抱きしめた。

「あ、赤井さんっ!キツい…締めすぎッ」

「悪いが、離す気は……ない。」

「うっ…。離れるつもりもないですよ?」

そう言って、夏帆は証明するように……でも、不慣れでぎこちなく自らの唇をそっと重ねてきた。

「ね?」

愛してる。と、してやったりな顔を向けてくる夏帆の両頬を優しく包みこんで固定すると、今度はこちらから、キスのお返しをしてやった。

重ねるだけの口づけを、更に深く……隙をついて口内に舌を侵入させると、夏帆の体がピクリと跳ねた。
舌先で丁寧に腔内を撫で回し、温かく柔らかい舌を執拗に絡め取って、緩く吸い上げてやる。

「ん、…んんっ。」

夏帆から自然と甘えるような吐息が漏れ、濡れた唇を名残惜しく離した。

「ん、ハァ……。な、なにするんですか!!」

「君に、大人のキスの仕方を教えてやったのだが」

「そんなの。む、無理……」

いや、その前に。

「まずは、"赤井さん"を卒業してくれないか?秀一、でいいよ」

「ぜ、ぜんしょします」

俺の腕の中で、夏帆は顔を真っ赤に染めたまま、健気にも「秀一……」と、精一杯の努力で、ちいさく呟いてみせたのだった。

end


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