バクマン。
□班長、温泉行くってよ。
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「そ、そうですか…。まぁ…意外な一面ですね、ソレ」
そんな二人の迫力に押された山久は、それ以上その話題に触れることなく仕事に戻ったのだが、その後……
山久は編集部に戻った吉田に先程の経緯を話してみると、吉田はなに食わぬ顔で言ってのけた。
「行くよ。温泉!草津に2泊3日でな」
「吉田さんが温泉……ですか?」
「温泉に連れてって…、なんてお願いされたら、普通に行くだろ?…仕事を詰めるくらいなんてことない」
「吉田さん。本当に、(彼女に)甘いんですね」
「何が?」
語り口はいつものままでも、一瞬、綻んだ表情を引き締めて、パソコン画面に向き合った吉田の姿を山久は見逃さなかった。
「吉田さん、頑張ってくださいね」
「あ?あぁ…今日中に終わるから大丈夫だ」
「いえ、仕事じゃなくて、旅行の方です」
「なっ、余計なお世話だっ」
照れ隠しにゴホンと一つ咳払いして、
山久を軽く睨みつけても、上司の威厳も説得力もない。
仕事ぶりからして、彼女なんて二の次で、自分本位なドS人間かと思っていたが、チラリと覗かせたデレな部分を窺い知り、確かにあの二人の言う
"面白いものを見た"
と山久は納得したのだった。