その他

□フェティシズム
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(お帰りなさい編)



「ただいま」


つけていただけのテレビの音しかしない室内に
玄関から吉田さんの声が聞こえてきた。


「お帰りなさい」

思っていたよりも早い帰宅。 日付が変わる少し前の時間だった。


「早かったですね?飲まなかったんですか?」


「俺か?飲んでない。平丸くんが飲みすぎて
泣くし、吐くし…泣きながらも吐いてたからな…ずっと介抱役だった」

出迎えて、脱いだ上着を受け取りながら、吉田さんの後について部屋に入った。

「あ、果歩。悪いがその上着、後でクリーニングに出してくれ」

「クリーニングですね。何か、飲みます?」

話しながらとりあえず上着はハンガーへと掛け、ソファーに座った吉田さんに聞く


「あぁ、水がいいな。」

「ちょっと、待ってて下さい、あったと思います」

そのままキッチンに行きグラスと、冷蔵庫からペットボトルを取り出して戻ってみると

「はぁー…」

…疲れた、独り言のように呟いて吉田さんは、ちょっと緩めたネクタイを解いていた。…何気ない仕草だけど、思わず見惚れてしまう

「…………」

コトン。

テーブルへグラスとお水を置くと、黙ってその様子を見ることにした

「果歩?ありがとう……?」

スーツ姿も確かに好き。だけど、ネクタイ解く吉田さんの仕草はもっと好きかも…いつもは注目しない首元や、紐解く指先…綺麗な手。ときめかない方がおかしいよ。だけど、吉田さんには絶対に言えない、言ったら馬鹿にされそうだから、"ザ・セクシー吉田"は私の脳裏にしっかりと焼き付けて、墓場まで持って行きます!今、決めました!

にやけてしまうのがバレないように、近くにあったクッションをつかみ取り、抱きしめて誤魔化した

「……そんなに好きか?」


「え…、」


自分の世界、真っ只中で気づきもしなかった。
私の右側の耳たぶを引っ張って、聞こえているのか?と直接、耳に問う吉田さんの声が、脳内を恐ろしいほど、甘く揺さぶった。



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