タイトルなんてない。
□2・ライバル関係継続中
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『緋色の捜査官』
警視庁の屋上で、暫しの休憩中。
手に持った本のタイトルを見つめて、ため息を溢す。
3ヶ月前に、面白いから零くんも読んでみて。と、名前にプレゼントされたものだ。
確かに工藤先生の作品は、どれも面白いと知っている。
しかし、緋色の捜査官のモデルがあの赤井だと思うと、イライラしてくる。
気分転換に、なんて手にしてみたけど、一向に気は進まず、とりあえず文庫本はポケットにしまった。
「はぁ……」
吐いた息は、通り抜ける風に掻き消される。
日差しはあってもまだ肌寒かった。
今日は、朝からFBIと合同の捜査会議だった。
昼食休憩を挟んで、再開されるまであと30分か……。
軽めに昼食を摂るか。
あぁ、そういえば……。
ジャケットの内ポケットを探ったところで、屋上のドアが開いた。
柵に凭れかかったまま、視界に入れた……いや、勝手に映り込んできた正面のニット帽姿の男に、げんなりする。
「やぁ、降谷くん。君もここで休憩か?」
「えぇ。でも、直ぐに出ますから」
未だに、ジャケットの内側に手をかけたままの僕の姿を見てなのか、赤井もさりげなく自身のジャケットの内側に手を滑り込ませた。
「出来れば君と、穏便に話がしたいと思っている」
「もちろんです。ここは警視庁内ですよ?まさか、貴方と銃で撃ち合いをするとでも?」
「全くだ」
同調しても、赤井の視線は鋭いままだ。僕も赤井を見据えて離さない。
動いたのは、ほぼ同時。
互いにジャケットから、取り出したモノも同じものだ。
ほら、やっぱり……。お前もか、赤井。
「…………」
「…………」
どちらも無言ままに、でも視線を外したら負けだという気がしてならない。
春先だっていうのに、この場所だけ空気が凍てついたように妙に冷やかだった。
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