月刊少女野崎くん

□堀せんぱい
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「野崎、相談があるんだが…」

「堀先輩が俺に相談なんて珍しいですね」

原稿が一段落したところで、改まる堀に紅茶を出しながら、野崎も座って話を聞く


「あのさ、野崎は…う、梅ちゃんだろ?」

「はぁ……?」

唐突に何を?と訝しげに野崎は堀を見つめた

「佐倉は…千代ちゃんだ。」

「えぇ、」

じっ…と睨むように堀に見つめ返された野崎は全く意図が読めないまま頷いた

「マミ、っ子柴なんて…みこりん、だろ?」

「鹿島に至っては…遊ちゃんだ!クソっムカつく」

ドン!と堀の拳がテーブルを叩き

陶器製のカップと受け皿がカチャンと揺れた

堀のご乱心ぶりに、やっと野崎はある程度の察しがついた

「先輩、夏帆のことですか?」

テーブルに少し溢れた紅茶を拭き取りながら堀に問えば

「あ、すまん、野崎…」

我に返った堀は謝り、すぐに冷静を取り戻したがその表情はどこか暗い

「俺、アイツの彼氏だよ…な?」

「はい。(たぶん)」

落ち込む堀に野崎は曖昧な返事をする

それよりも、お気に入りのニルギリが溢れたことが気になって仕方ない
早く紅茶を飲んで欲しい
今が飲み頃ですよ!堀先輩!!
野崎が堪らずズズイと堀の前にカップを進めると

一瞬、堀が凍りついた気がするが余計な突っ込みはスルーした


「夏帆は未だに俺のこと堀先輩って呼ぶんだよな…距離がある…と思わないか?」

「距離…ですか?」

言いながら、やっと堀が一口、紅茶に口つけたのを目で追った

「あ、この紅茶美味いな!野崎」

堀の言葉に野崎はニヤリと笑う

夏帆と野崎は幼馴染みだ

幼い頃から、お互い何かと比べられて育ち、最近じゃ張り合うこともなくなってしまったのだが、ついつい野崎の対抗心に火が着いた

すっかり空になったカップに然り気無く二杯目の紅茶を注ぎ入れると、気が利くと堀に喜ばれた

やったぞ梅子!堀先輩の胃袋を捕らえた。これは夏帆に勝ったも同然!と優越に浸る

「先輩、俺のほうが距離は近いですね」

「はぁ?物理的な距離の話じゃねぇーよ!」

「分かってますよ!梅子の方が断然夏帆より女子力高いと思っただけです」

「なんで、梅子が張り合ってくんだよ!オカシイだろ!」

「悪い癖だと自覚はあります」

「自覚あんのかよ。つーか、俺は"堀先輩"じゃなくて…もっと夏帆に碎けた呼び方で…せめて…(政行先輩とか…政行くんとか)だぁ〜っ!なに言ってんだ俺!!」

恥ずかしくなった堀は、照れ隠しに頭を掻く
とすっかり諦めモードに入ってしまったようだ
そんな堀のらしくない姿を見て、確実にここは梅子の本領を発揮しなくては…と野崎は思った


「分かりました!先輩」

「何がだよ」

「梅子の女子力を夏帆に伝授します。先輩との距離が近くなるような、碎けた呼び方をそれとなく、アドバイスをしておきますから」

「いや、別にいいよ。梅子、直ぐでしゃばるし」


「堀ぱいせん!なんてどうですか?ぱいせん!は、かなり砕けてると思いますよ?」

「どうですか?じゃねぇーよ!どこ砕けさせてんだ!!先輩の方じゃなくて、堀の方をなんとかしたいんだよ、俺はっ!」

イラっとした表情の堀に野崎はシレっと言った

「そうでした。先輩はパイ専じゃなくて、あし…」

「梅子ーッ!!」



END
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