月刊少女野崎くん
□桜、舞う
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「堀ちゃんと桜を見ながら一緒に帰るのも、今年で最後なんだよね…」
「あぁ、そうだな…」
満開に咲き誇った桜の木を見上げポツリと呟いた夏帆の横顔はどことなく寂しそうだと思いながら堀が同調する。
確かに堀と夏帆は3年に進級し、高校最後の年だ。
来年、同じように制服を着て肩を並べながら花見をすることはないだろう
他愛もない会話をしながら公園のベンチに腰をおろした
「明日から部活が始まるし、新入部員も入るだろ?花形は鹿島だけど…楽しみにしてんだ」
ニカッと笑みを携え嬉しそうに語る堀につられて、夏帆も漸く微笑んだ
「張り切ってるね?部長!」
「お、おう…ってかさ、部活だったり、野崎の手伝いとか…当分先は夏帆と一緒に帰れなくなるけど、ごめん」
「今日は一緒に帰れたし、桜も見れたから大丈夫だよ、堀ちゃん」
「あ、夏帆…花びらが…」
通り抜けた春の風が木々を揺らし、花びらがふわりと舞う。ピンク色の一枚が夏帆の長い髪へと滑り落ちたのを堀は目に止めた
「じっとしてろよ?」
「う、うん」
向かい合うと堀との距離が急に縮まる。夏帆の心臓がドキッと飛び上がった
堀の手が髪を撫でるように触れ花びらをつまんで取ると、器用な指先はそのまま夏帆の顎に添えられた
自然な流れで、クイッと顔が上を向く
驚いて見開いた夏帆の双眼は視界いっぱいに優しく笑みを浮かべた堀を映すとチュッと唇に丁寧なキスが落とされた
「来年も桜は一緒に見れるだろ?」
耳元で堀に囁かれ、夏帆は安堵する
来年、少しだけ大人へと成長した自分達を想像して、はにかみながら頷いた
桜が舞う
長い漆黒の髪に
青いシャツの肩先にも、そっと花びらが舞い落ちた
*04*28*