月刊少女野崎くん

□堀ちゃんタヌキ先輩の正しい扱い方
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幼馴染み、野崎梅太郎は少女漫画家
夢野咲子で…

彼氏、堀政行はその漫画の背景アシスタントだ

その事実は知っている
ただ、少女漫画にあまり興味はなかった


「これ、面白いよ!スギモも読む?」

「う…うん」

クラスメイトから薦められて、なんとなく月刊少女ロマンスを手に取った

それが、スギモと堀ちゃんタヌキ先輩との衝撃的な…笑劇的な?出会いだった






「梅ちゃん、見て!見て!これ、作ったの!可愛いでしょう?なんと、製作日数3日で…うわぉっ」

スギモが最後まで言い切らないうちに野崎が立ち上がってスギモを見下ろした

「なんだ?このタヌキ…」

「梅ちゃんの漫画を見て作ったの!堀ちゃん先輩モデル♪」

放課後、帰り支度をしていた野崎が、スギモに見せられたのは、タヌキだった…

手のひらサイズのタヌキは、毛糸で丁寧に編んだもののようだ

モデルが堀というだけあって、青いネクタイまで作られており、ご丁寧にちゃんと締めていた

スギモの器用さに野崎も感心する
完成度の高いものだ…

しかし、野崎にとってタヌキといえば、前の担当、前野のせいで拒絶反応を起こす
悪戦苦闘しながら描いた悪夢の作品のキャラが目の前にある
そう思うとやはり、前野の顔が浮かんでイライラする
渡された堀先輩タヌキに罪はないが、だんだん憎たらしく見えてくる

「握り潰したくてしょーがない!」

「え、梅ちゃん!!ヤメテよっ」

おのれ、タヌキ
おのれ、タヌキ
おのれ、タヌキ…

カチカチ山の兎…?某地獄漫画の獄卒の如く呟く野崎の目がマジだ…

「返して!先輩に見せるんだからっ!」

慌てて野崎から堀ちゃんタヌキ先輩を取り返すと、スギモはスクールバックをひっ掴んで教室を出た

「あっ!堀先輩は今日は家にくるぞ!スギモ」

野崎の言葉を背中で聞いたスギモは振り返ることなく「知ってる」と言い捨てた

その前に堀と会う約束をしているのだ







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