月刊少女野崎くん

□戦利品(幼なじみ)
1ページ/2ページ


「夏帆…そんなに、コレが欲しいのか?」  

耳元近くで梅ちゃんが、ため息混じりに囁いた

その声が…

耳から直接、脳内を甘く揺さぶって

首筋に掛かる吐息にゾクリと震えた

官能的な振舞いでいて、それとは違う
甘い雰囲気など微塵もないのに

無意識無自覚に、その仕草が出来るのだからこの男、なかなか憎い

「もう、ヤメテ…」

私には、先輩がいるんだから!

「大きな声じゃ言えないと、言ったのは夏帆だろう?小さな声じゃ聞こえんしな…」

程よくしてみたのに、何が不満なんだ?と梅ちゃんが言う

「声量の問題じゃない!内密にって意味だよ…接近しなくてもいいでょ?背後で囁くのはヤメテ!無駄に婀娜っぽいのも嫌!!」


「無駄に婀娜っぽい?」

そのフレーズに反応して、ピタリと梅ちゃんの動きが止まった

「な、何?」

じっ……と、見つめられて何がなんだか訳も分からず、慄いた

「どの辺が"無駄に婀娜っぽい"んだ?詳しく聞かせてくれ」

鉛筆とメモを用意して、正座されても正直困る

「嫌だよ!自分で考えなよ、梅ちゃん!」

本人を目の前にして、ソレを私に言わせるの?

いつもは死んだような眼をしてるくせに、そんな真剣な眼差しを向けられてもやっぱり困った


「じゃあ、こうしよう…意見を聞かせてくれたら、夏帆が喉から手が出るほど欲しいコレをあげよう」

くっ……!そうきたか!!

「狡いよ!それ…」

「どーする?欲しくないのか?」

欲しい…
欲しいに決まってる

「コレ、佐倉にやってもいいんだぞ?」

せせら笑いを浮かべた梅ちゃんの言葉は悪魔の囁きだった


次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ