月刊少女野崎くん

□翻弄
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ドンと私の右耳近くに、堀先輩の左手が置かれ

背中は廊下の壁にピタッとくっついた

所謂これは…壁ドンだ


今日、先輩に逢えたのは昼休み

憧れのsituationは突然にやってきた!


綺麗に引き上げた先輩の唇を凝視して私は固まった


多分、私…。コレに弱い

先輩に絆される

まずい!と危機感を募らせているのに、反して胸はキュンと高鳴った


いつになく真面目な表情の先輩に見つめられたら、ドキドキが加速して止まらない


静観していたギャラリー達が"堀先輩が本気で夏帆を落としにかかった!" ヒソヒソと話す声が自然と耳に入って擽った



「この国の…二次元とカ○プヌードルは熱いんだろ?」


「………ふぇっ?」

えーと。

言ってる意味が分からない…

いや、それ…CM?
CMですね… ハイ。
確かに壁ドンありました



最高の境遇には、あまりにも似合わない台詞…

先輩はわざと選んだの?

いや、…本気?

悪戯っぽく笑ってるけど…

なんだか、様子が変だ


鮮やかなブルーのシャツは
清潔感たっぷりにピシッと着こなされ

前髪だって、ちゃんとワックスで丁寧にセットされている

身だしなみは完璧に、でも…

目の下のうっすらと出来てる隅が

先輩の状態を物語っている


「先輩、もしかして…徹夜ですか?」

梅ちゃんの漫画の手伝いしてたの?

だから…テンションおかしいの?



「あぁ…今回、背景が多くてな。
しかも、納得いかなくて修正に時間かけたから…流石に限界がきた」


そっと体が離れるのを、名残惜しく感じているのは、どうやら私だけ

頭にお花を咲かせてる場合じゃないようだ



「あー…、腹へった」

ぐうぅぅぅ…

先輩のお腹が鳴ってる…

空腹じゃ、判断能力だって落ちるはず
だよね?

だけどそれは…

壁ドンの無駄遣いですよ


「先輩?もしかして…カ○プヌードルが食べたくて?まさか…ひとっ走り購買に行って買ってこい!?ってことですか?」

単なるパシり?

違う意味でドキドキしてきた私に…


「頼むよ、夏帆ちゃん」


満面の笑みで返される

「はい…。行ってきます」


この策士な先輩に…


今日も私は、翻弄されるのだった


(私のドキドキを返して下さい!!)




END
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