Happy Valentine!!2019
□"secret admirer"
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「修一先生。受け取って下さい!」
「あ、えっと……。教師としてチョコは受け取れないよ?ごめんね。」
ソレは、廊下で、教室で、社会科準備室で…。
今日だけで、何度同じ光景を目にしただろう。
"人気者の修一先生"
修一お兄ちゃんに、バレンタインチョコを渡したい女子がたくさんいるとは思っていたけど、私の予想を遥かに超えていた。
正直、圧倒されてチャンスもないまま学校が終わると逃げる様に迎えの車に乗り込んだ。
自分なりに考えた、修一お兄ちゃんへのチョコレートとプレゼントは、誰よりも特別な想いを込めて渡したかったのに…。
「生徒からのプレゼントは全部断っていたし……貰ってもくれないなんて」
ポツリ、と呟いた言葉は着いたばかりの部屋で静かに消えていった。
「……あれ?」
視線の先、机の上に何か置いてある。
それは…
赤いバラの花で可愛く纏められたミニブーケ。
一緒にカードも添えられてあった。
誰からだろう?
メッセージを読んで、思わず頬が赤くなる。
嬉しくてカードを持つ指先が小さく震えた。
私は、この筆跡を知っている。
授業中に、宿題を教えてもらった時に…。何度も見ていたから間違えるはずがない。
"secret admirer"
(あなたを密かに想う者より)
修一お兄ちゃん、英国式バレンタインカードなんて、ちょっと格好良すぎだよ。
「よし!」
バックの中にしまってあったチョコとプレゼントを取り出して、私もメッセージカードを書いてみる。
後で、御堂さんに頼んで修一お兄ちゃんの部屋に置いといて貰おう。
"I'm so glad that I found you.
Happy Valentine's Day!"
(あなたを見つけてよかった。ハッピーバレンタインデー!)
END