名探偵コナン

□家庭教師にトライ!〜赤井秀一の場合〜A
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火曜日と金曜日の夜は胸がドキドキする。

週に二回、英語を教えに来てくれている沖矢先生の発音は綺麗だし、…よく通る声も好き。
しかも…ルックスも申し分ない、ときたら…先生に恋に落ちるまで時間はかからなかった。





なぁーんて、上手い具合に恋愛展開になる筈もない。
胸がドキドキするのは、恐怖支配によるものだ。
叩かれはしないもの、手に持つ定規の威圧感は半端ない!
発音が綺麗だ。という点、だけは間違っていないけどね!

「ぐぬぬ……っ」

今日も呻きながら問題集と格闘していると、察したように沖矢先生が声を掛けてくる。


「May I help you?」

「はぁ……?」

「はぁ?じゃない。今、解いてる問題だろう。訳せ」


チラリと部屋の時計を気にすれば、まだ30分以上も時間が残っている。
英語だけなら、我慢して頑張れる……というのに、今日から英語の後に数学も始まるのだ。
唯一の救いは、数学の先生が沖矢先生ではないことぐらい。
あぁ、気が重い。

「どうした?ボケっとして……」

なかなか指示が入らないことにイライラしたようで、沖矢先生に急かされ
慌てて意識を英語のテキストに戻した。

「う、え……と、私が……あなたを助けたのは………………5月?」

「違う」

ピクりと片眉を上げ、ピシャリと切り捨てられたら、思わず萎縮してしまう。
考えごとをしていた自分が悪いのだけれど。

「まず、場面設定を考えろ。君が店員だとして……店に来た客が困っているのを見て、"私があなたを助けたのは5月ですか?"と、声を掛けるのか?もし、俺が客なら他の店に行くぞ」

「あぁ、そうか……。何かお探しですか?」

「解釈は悪くない。教科書通りに訳すなら?」

漸く答えを導きだせたのを確認すると、沖矢先生は嘆息して眉根を寄せた。

「さっきから、集中してないだろ?何か気になることでも、あるのか?」

「べ、別に…………ないですよ!!」

じっ……と、沖矢先生にみつめられて、思わず視線を反らした。

集中していなかったことは事実。
正直、後ろめたさはある。

「では、先程から時計を気にしているのは何故だ?気付かないとでも思ったか?」

バレてる……。
ズバリ指摘されて、たらりと冷や汗が出る。未だに見据えられては、もはや抗えないと悟った。

「あ、あの……集中していなかったのは認めます。…………ごめんなさい。早く英語が終わらないかなぁ〜?なんて、ひっ、」

顕かに沖矢先生の表情が険しくなった。

「今日から、英語の後に数学があるので、ちょっと憂鬱なだけです。」

「ほぉー。今日から数学も、か。」

それがどうした?と云わんばかりに鼻先で軽く笑われ、聞き流されたと思っていると、意外な言葉を掛けられた。
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