名探偵コナン
□赤井秀一
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私は……ふと、思い出したように安室さんの"あの台詞"を言ってみたくなる病を患っていると思う。
えぇ。変な女だと自覚していますよ!
そして、今が正にソレだ!
起き抜けの、脳みそが停止状態という……油断も隙も有りまくり、の無防備な時に!
洗面と歯磨きを終え、鏡の前で自分の顔を見ながらだ。
「アカイ……シュウイチ!」
うーん。なんか違う……。
「あかい、しゅういち!」
いや、遠ざかった。
気を取り直して、もう一度!
「赤井、秀一!!」
おお。上手く出来ました〜!
どうだっ!自画自賛して、最後にもう一回……
「赤井……」
「それ、いつまで続くんだ?」
「う、えぇぇっ!」
完全に自分の世界から、急に現実に引き戻されるような感覚。
鏡越しに映る赤井さんとバッチリ目が合うと、口から心臓が飛び出るくらい驚き、瞬時に全身の血の気が引いて動きが止まった。
「あわわ、あぁぁ……い?いっっ……」
密かな楽しみである、通称、安室なりきり赤井秀一呼びごっこ(無駄に長い)を、ご本人様に視られたのだ。
ただの痛い女……。
公開処刑。
羞恥!
ぐるぐると頭の中に文字が羅列し、"赤井さん、いつから見てたの?"というフレーズが行方不明でうまく言葉が出てこない。
しかし、赤井さんは私の言いたいことなど簡単に理解したようだ。
「いつから見てたか?って、最初からだが……」
こくこくと頷くと、更なる絶望の言葉が返された。
「君が洗面所を使っていたから順番待ちしていたら、寸劇が始まったようだし邪魔しちゃ悪いと思ってな」
「ひぇふ!!!」
涼しい顔で告げると赤井さんは、私の隣に並び歯磨きを始めた。
気配を消しながら順番待ちする人っているんだな……。
ポカーンと赤井さんの横で突っ立って、どうでもいい事を暫し考えていると、既に顔を洗い終えたようだ。
水も滴るいい男の見本が目の前にいる
「君は、安室くんのモノマネが上手だな」
「よく分かりましたね!安室さんのモノマネだって……」
赤井さんに見惚れてて、恥ずかしさが薄れてきた頃に、本題が戻ってきた。
「わ、私のモノマネ見たんですから、赤井さんも……私のリクエストやって下さい」
「何をやれと?」
「そ、それは……ですね」
ゴニョゴニョと耳打ちすると、頷いた赤井さんは綺麗に口角を引き上げた。
「ほぉ……、了解。但しソレを言うには君をベッドに引き戻してからにしたい」
エ?ジャア、イイデス!!
朝からの申し出に断りを入れる為、開きかけたその口は、あっという間に赤井さんによって塞がれた。
挨拶程度の軽いキス。
なんて、生易しいものじゃなかった!!
逃げようにも、確りと顔に添えた手で固定され呼吸も儘ならない程に執拗なものだった。
「ん、くっ……(苦しい!)」
息も絶え絶えで解放されても、足に力が入らない。
抱き上げられると、そのまま赤井さんの胸の中に収められてしまった。
「うっ……。卑怯だぁ、キスしてなんて言ってない!!」
「誘った君が悪い」
「どう解釈したらそうなるんです?」
往生際悪く身悶えたところで、離されるわけもなく、
流されるままにベッドに連れ込まれ、組敷いた赤井さんを真下から見上げると、不意に視線が交じ合った。
それから……
何ともいえない甘さを含んだ眼差しで赤井さんは期待通りの、艶のある低音で熱っぽく、
「"____"」と言い放った。
それは、甘く脳内を揺さぶられゾクゾクするような感覚。
ドキリと身体が緊張したのは一瞬で、再び力が抜けていく。
そうして……私は身も心も堕ちたのだった。