名探偵コナン

□無条件に愛してやる
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「降谷さんと一緒だとドキドキします」

「そうか…俺もドキドキしてる」


こんな密室空間にいたら誰だってドキドキするわ!って、何言ってんだよ、俺も…。

「いや、そうじゃねぇーよ」

「降谷さん…」

「なんだ?」

言い淀んだ夏帆に、先を急かすように聞き返した。


「事故です。さっきもココに隠れてました…あ、あかっ…赤井捜査官と…。」

最後の方は、消え入りそうな小声だった。

「マジか…」

「はい」

重苦しい空気が漂うなか、やっと夏帆の挙動不振が理解できた。
ボケっとでもしてて、赤井の逃亡に巻き込まれたんだろう?

やっぱ馬鹿だコイツ。

「っ、たく……」

ふぅっ……と、一つ溜め息を吐いた。

「まさか、浮気して「断じて、浮気じゃないです!!」……。」

割って入った夏帆の言葉は、力強い否定だった。
赤井と浮気など疑っていないが、素直な否定の反応がつい、可笑しくて…からかいたくなる。

「今から赤井をシメて来る」

静かに一段と低い声が、薄暗い密室に響けば怒りを滲ませた表現も容易い。

潜入捜査で培った演技力をここで発揮するとは思わなかった。

「だぁ、ダメです!」

焦った夏帆が、食い止めようと必死になり、弾みでロッカーの扉が開く。
バランスを崩した夏帆が外に飛び出して、助けようと伸ばした俺の腕も一緒に持っていかれた。

「いったぁ〜、…」

「大丈夫か?」

崩れるように倒れた夏帆の手を引いて起こしてやると、今にも泣き出しそうな顔をしている。

「何処か、痛むのか?」

「違います。だって降谷さん、怒ってるから…ごめんなさい」

最初から怒ってない。と、口を開きかけるよりも先に、矢継ぎ早な夏帆の言葉に耳を疑った。

「赤井さんの所に、行かないで下さい!!」


「はぁ……?」

「どうしても、赤井さんを殴るなら、私を殴ってから行って下さい!過失は50:50なので!」

俺の正面に立ち、夏帆は"殴れ!"と言わんばかりにギュッと目を瞑った。

なんなんだ?その、私を倒してから行け!的な態度は…。

さっきのは、冗談だ…と、ネタばらしをしようかと思ったが、本当…予想を超えたことばかりしてくれる。

まぁ…そんなアホなところも、全部引っ括めて好きなんだけどな…?
好きに理由などない。とは、言ったものだ。
例え、成り行きで赤井とこの薄暗いロッカーに身を潜ませていたとしても、だ。
惚れた弱みなのだろう。
"無条件に愛してる"なんて、教えてやるつもりもないが……。

但し、赤井は、コ●ス!!

未だに目を瞑る夏帆に、やれやれと、肩を竦めた。

「もう、怒ってないから安心しろ。仕事に戻るぞ、秋月」

あえて仕事モードに切り替えてから、
少し屈んで、ちゅっ、と不意討ちに唇を重ね合わせる。
驚いて、パチリと目を開けた夏帆は、安堵したのち口付けの恥ずかしさに頬を上気させたのだった。



END

18,08,06


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