名探偵コナン
□無条件に愛してやる
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まだ…捕まらない。
「何処だ!赤井ィッ!」
地団駄を踏む俺を見て、後を付いて来たFBIやら公安の部下達は、畏れをなしたのか、いつの間にか誰もいなくなっていた。
「っ、たく……」
仕方なく来た道を、もう一度確認しながらゆっくり戻ると、使われていない資料室の前で足を止めた。
「降谷さんに会いたい…」
それは、確かにはっきりと聞こえた。
なぜ、こんな所で…?自分を呼ぶ、聞き覚えのある声に驚いた。
滅多に足を踏み入れない資料室に、ポツンと置かれた掃除道具入れのロッカーは、無機質に扉が開いたままだった。
その傍らに佇むシルエットは間違いなく夏帆だ。
「夏帆?」
部屋に入ると、夏帆はビクンと肩を大きく揺らして振り返った。
「ふ、降谷さん…どうして?」
それは、俺も聞きたいくらいだ。
まさか名前を呼んだら、本人が出てくるなんて夢にも思わなかっただろうに…
ただ、その動揺振りが気になった。
「いや、俺も驚いた。赤井を探していたんだが、夏帆はこんな所で、何してるんだ?」
青いポリバケツ片手に突っ立てるから、掃除のおばさんにでも何か頼まれごとかと、聞いても夏帆は違うと首を横に振った。
そればかりか、今は俺の方を見ようともしない。
わざと視線を反らしている?訊いたところで話そうとはしないから、ただ俺も黙って夏帆の様子を窺う。
「降谷さん…」
沈黙に耐えられなくなったのか、素早く手を引かれたかと思うと、空いた掃除道具入れのロッカーに連れ込まれた…
「いったい、なんの真似…」
夏帆の不審な行動を咎めようとした俺が、言い切らないうちに扉がパタンと閉まった。
「降谷さん…怒らない?」
薄暗く狭いロッカーの中で、夏帆はギュッと抱きついたまま訊ねてくる。
「怒る」
「………」
毅然とした返事に夏帆の体が急に固くなった気がして、責めるつもりはないと、仕方なく折れた。
「場合によって、だ。まずは話してくれないと…だろ?」
確認するが、ここはロッカーの中だ
男女二人が入る箱ではない。
"たまに馬鹿になる"とは思っていたが、こんな暴挙にでるとは思っていなかった。なんだか俺、目眩がする。
「降谷さんが好きです。嘘じゃないです」
「あ?あぁ…」
唐突に言い出した夏帆に、なに言ってんだコイツと思ったことは内緒だ。