名探偵コナン

□Bourbon
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「あ、!あの、…秋月さんのお宅で間違いないですか?」

「あ、あぁ。はい、そうです。ご迷惑、お掛けしたようで、すみません」

俺の顔を見て、ギョッとしたのは…
俺よりも、若くて、どこか爽やか系な青年。

まさか、"男と一緒に住んでいたとは知らなかった"と、顔に書いてあるようだ。

だが、こちらも同じく、ギョッとした。
まさか夏帆が男を連れて帰ってくるとは…。
なんて…ただ、酔っ払った夏帆を送り届けてくれた、職場の人間だと判断したから、俺も努めて丁寧な態度をとってはいる。

「秋月さんが、一人で帰られるのは心配だったので…でっ、では…し、失礼します」

急に青ざめて、そそくさと帰ろうとするコイツには、少なからず下心もあったに違いない。
心中は穏やかになれないが、その言動からすると、やはり彼は夏帆の会社の後輩なのだろう。

酔っ払いの上司をわざわざ送ってくれたのだから、礼くらい言わなくてはと、呼び止めた。

「あ、君…、夏帆を送り届けてくれてありがとう」


「…いえ。ただ、秋月さん。そんなにお酒を飲んだ訳ではないのですが……」

ボソボソと言い淀みながら、状況を説明する彼の言葉に自分の耳を疑った。

「バーボンがお好きと仰る割には……なんというか……。飲み慣れてはいないご様子でして」

「バーボンですか」

ため息混じりに呟くと、彼は視線を游がせたのち、丁寧にお辞儀をして玄関を出て行った。

「ふぅーりゃさん。たらいらぁ…」

「…おかえり。」

ふにゃふにゃっと、呂律も回らない、足もふらつく夏帆の腰元をしっかりと支えて部屋に入れた。

「水、飲むか?」
「はぁーい。飲みらす!」

とりあえず、ソファーに座らせて、トロンとした夏帆に聞けば、なんとも調子のいい返事が返ってくる。

全く、今日は会社の歓迎会と聞いていたが、まさかバーボンを頼むとは……。
そんなに酒に強くもないくせに?

「バーボンが好きだ、なんて初耳だ」

冷えたミネラルウォーターを片手にキッチンから戻ってみれば

「ん?…寝ているのか?」

既に、夏帆は意識を手放したらしく、ソファーに横たわっている。
スヤスヤと寝息を立てて気持ち良さそうな表情で

「あむにょさん……」

久しく呼ばれていないその名を、無意識に夏帆は呼んだのだ。
もう、安室透ではないのに。

組織を壊滅させてからもう3年か、まだ3年か。
ただ、今でも夏帆の中にいる俺は、バーボンでもあり安室透でもあるようだ。
如何に夏帆の心中を俺が占めているのかを窺い知り、自身すら嫉妬の対象になりそうで、幸せそうに眠るその姿を眺めていると、段々と腹が立ってくる。

「…隙、有り過ぎなんだよ。」

連絡をくれたら、迎えに行ったのに。あんな、若造に送られて…人の気も知らないで。

「困った酔っ払いだな」

夏帆が想う以上に、俺がどれだけ君を愛しているか知らないようだから。
とりあえず、目を覚ましたら説教だ。

それから、愛しくて壊してしまわぬよう懇切丁寧に、溢れてしまう程の愛を注いであげよう。

その身体に……。


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