ハイキュー!!
□内緒のプレゼント
1ページ/1ページ
「名無し〜、大地は?」
「あー。菅原、お疲れ。大地なら2年生の、えん?えんの……」
「縁下?」
委員会で昼休みの前半を潰され、やっと教室に戻ってきた菅原が、なんとなく言い当てると、
そう、そう!と、名無しはスマホを弄りながら頷いた。
「縁下くんに、連休中の部活予定表を渡してくるって、言ってたよ?」
「おー。そっか」
先程まで澤村が座っていたであろう、名無しの前の席に菅原が座ると名無しは携帯から目を離さず、なにやら顔を緩ませていた。
「どうした?名無し。ニヤニヤして」
何気なく菅原が聞けば、連休に探偵アニメの映画を観に行く約束の返事をもらった。と、名無しは嬉しそうに話を始めた。
「久しぶりなんだ…!」
「へぇ〜?」
久しぶり……って?デートが、か?
さっきまで仲良く一緒に、昼飯を食ってただろ?この、バカップル。
どんだけ一緒にいたいんだよ……。
思わず、菅原は苦笑を溢した。
しかし澤村は、今2年教室にいるはずだ。
はて?と、菅原の脳内で、妄想が始まった。
まさか、大地……。縁下に部活日程の説明をしながら、携帯で返事も打ってんのか?
器用か!!サームラくんは器用ですかコラ。
後輩、田中の口調を脳内再生させる。
突如、微妙な表情をした菅原を見て、名無しも、困惑していた。
「多分、菅原の想像と違う……。
相手は大地じゃないからね?中学の友達だよ?」
「うん……。あ、なんだ。大地とじゃないのか」
菅原は、てっきり澤村との約束だとばかり思っていた。
「だって、男バレは毎年恒例の強化合宿でしょ?」
「だよなー。普通に考えたら部活あるもんなぁ……。」
高校生活最後になる大型連休すら、部活三昧だ。
「俺さ、今年のチームは絶対強くなると思うんだ。だから、大地をもう少しだけ貸してくれない?」
「一年生の時から、ずぅーっと三人で頑張ってたじゃない。何を今更、馬鹿じゃないの?」
さらっと男前な名無しの言葉に、菅原は呆気に取られる。
「そういう奴だよなぁ……。名無しは」
頬杖をつきながら、菅原は思い付いた様にポケットから携帯を取り出すとニヤリと笑った。
「名無しに、プレゼントやるよ。 我がバレー部伝統の寝起きショット?大地の貴重な写真だ」
「プレゼント?」
思案顔の名無しに、笑いを堪えながら菅原は、ある画像を送信した。
「うっ。わあああぁぁ菅原……。ありがとう。一生の宝にする!!」
「大地に内緒な?俺が怒られる。前回の合宿の時の大地の寝顔!消せって言われたんだけど、名無しに送ったから、今から消すわ」
アハハと笑う菅原の肩を、ポンと背後から誰かに叩かれ、菅原は思わず視線を逸らした。
大方、予想がついている。
「どうした?スガ。楽しそうだな?」
「だ、……大地。おつかれ……」
「あ、大地!お帰りなさーい」
頬を緩めたままの名無しとは反対に菅原は気まずい状況だ。
多分、いや確実に澤村にバレた。
菅原の肩に置かれた、澤村の右手から静かな圧力を感じるのは気のせいじゃない。
1年の日向と影山を体育館から閉め出した時と同じくらいの威圧感だ。
しかし、名無しを目の前にした澤村は、菅原を前にした時のソレとは違う表情をしていた。
「名無し。頼むから、それ消してくれない?」
「えー?待ち受けにしたい!!」
「や、やめてくれ……」
困ったような、照れたような……。
どう対応したら良いのか、わからない普通の男子高校生みたいだ。
「アオハルかよ……」
その原因を作ったのは、紛れもなく自分だと菅原は自嘲する。
こうしてバカップルにすっかり当られ"俺だって彼女が欲しい!!"と、羨ましく思うのだった。
END