ハイキュー!!
□彼と彼
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発端は、些細なこと…
「絶対に譲れない、トッティーが可愛いよ」
「トッティー?何それ。」
「6つ子の末弟」
「誰が誰だか…名前も顔だって区別がつかないし…服だって、ダースで買うんだべ?1話のF 6は日向がネタにされたから、俺は見ないよ?トッティーなんて知らないし!」
「顔も名前も、微妙に違うよ!!F 6を知ってるくせに!なんでトッティー知らないの?」
"勉強会"と称したお家デートにもすっかり慣れて、菅原の部屋で寛ぎながら、流行りのアニメについて低レベルな言い争いをしてる彼等は、世界一、暇なカップルだ。
「ふーん、で?」
「な、…なに?」
お揃いに買ったマグカップをテーブルに置くと菅原が、じりじりと名無しに詰め寄った。
「"トッティー"のどこが魅力?」
真顔で聞いてくる、菅原の背後には、嫉妬の色が見え隠れしている。
確かに可愛いとは言ったけれども…
「み、魅力?やっぱり…"声"かな?」
正直に言って、名無しは早速、後悔した。菅原の表情は明らかに不機嫌で、顎に指を添えるとなにやら考えているように見えた。
これは、ヤバイ。経験からいえば、悪い予感しかないと、名無しは思う。
「"声"だって?…俺と、どう違うのさ?」
してやった、とばかりな声色に名無しは、惑わされる。
「こ、孝支がソレを言ったらダメだよっ!…って、アレ?今の声は?トッティー?それとも、孝支?」
「さぁ。どっちだろーな?」
「もぅ!」
「トッティーの声の方が、好きなんだろ?」
気がつけば、座っていたはずなのに視界はクルッと反転していて、名無しの背中はソファーに押し付けられていた。
「今日は甘えてみてもいい?」
彼じゃない、彼の声。
耳元で囁かれる甘い誘いに、名無しは思わず靡きそうになった。
「……トッティーじゃなくて、やっぱり孝支がいいかも。」
「だべ?」
満足そうに口元を引き上げて笑うと、おでこにチュッと、短めのリップ音立てたあと菅原の身体をスッと離した。
「てかさ、名無しも俺も、いったいよねぇ〜。」
にっこり笑う表情と、その口調は全く噛み合っておらず、そればかりか菅原は確実にトッティーを知っていたことに、名無しは殊更恐ろしさ感じたのだった。
END