ハイキュー!!
□熱中症
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バレー部の主将でもある澤村は、とても真面目で責任感もある。誰よりも練習に励む努力家だ。
そんな忙しい彼は、今日も部活前の僅かな時間を名無しの為に作っていた。
「名無し、今日はもう帰るのか?」
「う、ん…。」
「どうした?元気がないな」
名無しの歯切れの悪い返事を気にして、澤村が柔和な態度で訊ねると、名無しはキョロキョロと辺りを見回した。
「あのね、大地…。熱中症って、ゆっくり言ってみて?」
「ん?ねっ。ちゅー…しよう。?!」
名無しの意図など知らずに、澤村はゆっくりとした口調で言い終えると漸く気がついた。更に顔を赤くしている名無しを見て、目を丸くした。
「え、と。名無し…。その、なんだ?ちゅう?」
「うん。したいな…。大地と」
普段、名無しがこれ程までに大胆な行動に出たことなどなかった。最近はデートらしいデートもしていない。愛情不足というならば、澤村も同じだ。
「俺も…」
照れて頭を掻きながら、澤村は人気のない体育館裏に、もう一度誰もいないことを確認すると、名無しの身体を軽く自分の方へ引き寄せた。鼻先が触れるほどの距離は、ドキドキとお互いの鼓動が聞こえてきそうだった。
ほんの数秒、優しく重ね合わせた口づけのあとで、澤村の大きな手のひらが名無しの頭をよしよし。と、撫でるとすっかり名無しは安心で満たされた。
「わがまま言ってごめんね。大地、ありがと」
「いや、俺も…ごめん。」
「やーい!大地のむっつりスケベ〜(笑)」
甘い雰囲気は程無く壊され、背後からするその声に澤村の身体がビクッと揺れた
「ス、スガ…?」
名残惜しむ間もなく離れた澤村の肩越しから、ヒューッと茶化す菅原と名無しはパチッと目が合った。
「熱中症!あっついねぇ〜!」
「スガに見られた…」
愕然とする澤村を余所に、菅原はニカッと笑うと颯爽と通りすぎて行った。
「大地…大丈夫だよ。スガちゃん、私達の味方だもん。見てないと思う…」
全ては澤村と名無しのクラスメイトである菅原の入れ知恵だった。などと、澤村には言えない。いつも温厚である彼が怒ると、すごく怖いのだ。
名無しは苦笑いを浮かべると
「練習、頑張ってね」
ちょっぴり背伸びして、澤村の頭をよしよし。と、するのだった。
END