ハイキュー!!

□熱中症
1ページ/1ページ


バレー部の主将でもある澤村は、とても真面目で責任感もある。誰よりも練習に励む努力家だ。

そんな忙しい彼は、今日も部活前の僅かな時間を名無しの為に作っていた。

「名無し、今日はもう帰るのか?」

「う、ん…。」
「どうした?元気がないな」

名無しの歯切れの悪い返事を気にして、澤村が柔和な態度で訊ねると、名無しはキョロキョロと辺りを見回した。

「あのね、大地…。熱中症って、ゆっくり言ってみて?」

「ん?ねっ。ちゅー…しよう。?!」

名無しの意図など知らずに、澤村はゆっくりとした口調で言い終えると漸く気がついた。更に顔を赤くしている名無しを見て、目を丸くした。

「え、と。名無し…。その、なんだ?ちゅう?」

「うん。したいな…。大地と」

普段、名無しがこれ程までに大胆な行動に出たことなどなかった。最近はデートらしいデートもしていない。愛情不足というならば、澤村も同じだ。

「俺も…」

照れて頭を掻きながら、澤村は人気のない体育館裏に、もう一度誰もいないことを確認すると、名無しの身体を軽く自分の方へ引き寄せた。鼻先が触れるほどの距離は、ドキドキとお互いの鼓動が聞こえてきそうだった。

ほんの数秒、優しく重ね合わせた口づけのあとで、澤村の大きな手のひらが名無しの頭をよしよし。と、撫でるとすっかり名無しは安心で満たされた。

「わがまま言ってごめんね。大地、ありがと」

「いや、俺も…ごめん。」



「やーい!大地のむっつりスケベ〜(笑)」

甘い雰囲気は程無く壊され、背後からするその声に澤村の身体がビクッと揺れた

「ス、スガ…?」

名残惜しむ間もなく離れた澤村の肩越しから、ヒューッと茶化す菅原と名無しはパチッと目が合った。


「熱中症!あっついねぇ〜!」

「スガに見られた…」

愕然とする澤村を余所に、菅原はニカッと笑うと颯爽と通りすぎて行った。

「大地…大丈夫だよ。スガちゃん、私達の味方だもん。見てないと思う…」

全ては澤村と名無しのクラスメイトである菅原の入れ知恵だった。などと、澤村には言えない。いつも温厚である彼が怒ると、すごく怖いのだ。
名無しは苦笑いを浮かべると

「練習、頑張ってね」

ちょっぴり背伸びして、澤村の頭をよしよし。と、するのだった。

END


次の章へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ