ハイキュー!!
□1番になりたい‼
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2番が好きって訳じゃないけど
2番になることが多かったから
2番でもいいや、って思ってた。
例えば、テストの点数だったり…
部活の部長を決める時だって…
1番はいつも大地…それが当たり前だと思ってた。
大地に勝とうと張り合ったこともない。
だってさ、大地は勉強もできる。
リーダーシップの素質もある。
努力してなんとかなることばかりじゃない。
けど、俺は俺に出来ることをやってきた。
その結果が2番
「…笑える」
放課後の教室の片隅で、ぼやいてみたって、喧騒の中にかき消されただけ。
気だるげに頬杖ついてぼんやりと教室の中を眺めていると視界の先に名無しが映る。
ほら、楽しそうに笑ってる。
大地の隣で…それがいつもの自然な景色。
見てるのが辛くなって、俺は視線を窓の外へと逸らした。
幼馴染みなんだ…って、大地から紹介されたのが名無しとの最初の出逢いだった。
それから…名無しは、俺と大地がいると顔をだすようになった。
いつの間にか3人で過ごす時間も増えて、少しずつ名無しを意識するようになった。
"名無しが好きだ"そう、気づいた時に俺は思った。きっと、名無しの1番も、大地なんだろうな…って。
分かるんだ、ずっと名無しを見ていたから、大地と一緒にいる時に感じる視線、どんなに遠くにいても、俺は名無しの視線に気付いてしまう。一瞬、自分と目が合ったと錯覚してしまう。でも、その瞳に映るのは…俺じゃなくて隣にいる大地の方だ。
それが辛くて…寂しくて、今みたいに視線を逸らす。本当は名無しの1番になりたい!って想っているのに、裏腹な態度をとって自己嫌悪。
ダメダメな俺
「ホント笑える」
「菅原くん?何が可笑しいの?」
ぼやいただけ、のつもりがそれを当然のように拾われて、驚いて顔を上げた。
見上げたその前には、いつの間に来たのか名無しが当たり前の様に立っていて、俺を覗きこんでいた
「今日…部活ないって、大地に聞いたから…一緒に帰らない?あ、大地は委員会だから別なんだけど、菅原くんが良ければ…」
「あ、うん。一緒に帰る?」
今までだって二人で帰ったことくらいあるのに…。
名無しの方から言ってくるのは初めてで、緊張したのを誤魔化すように笑って返事をすると、名無しは、ホッと小さく息を吐いて、つられて笑った。
深い意味なんて、きっとない。
淡い期待もしない方がいいって、分かってる。
それでも…
「名無しの1番になりたい。」
諦めるなんて出来なくて、つい口にしてしまった願望に、自分でも戸惑いを隠せず顔が熱くなる。
告白と受け取られてもおかしくない発言だ。
「菅原くん?」
「ご、ごめん。何でもない」
名無しは驚いたように瞳を揺らして俺の隣に並ぶと、恥ずかしそうに言った。
「私も…1番になりたいな。」
いつもは白い名無しの頬がうっすらと紅潮したのを凝視しながら、今度は俺が驚く番だった。
ずっと、大地のことが好きだとばかり思っていたから…
えっ?と自分の耳を疑いたくなったが、名無しは確かに言ったのだ。
「菅原くんの…」と…。
End