バクマン。

□班長、温泉行くってよ。
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週刊少年ジャック編集部

「吉田さん、今週のアンケート結果です」
「ん?あぁ。すまないが山久、そこに置いといてくれ」
「はい。ってゆうか、吉田さんその資料…もう出来たんですかっ?速っ!」

「いや、あと少しだが、大体は出来た…。あっマズイ、平丸くんとの打ち合わせの時間だ!」

スクっと立ち上がり、愛用しているトートバックをひっ掴んで、慌ただしく編集部を出て行く吉田の背中を、山久は、「お気を付けてー」と、軽く見送った。

「どうしたんですか、吉田さん。いつも以上の仕事の速さ…昨日は家に帰ったんですか?あの人…最近、仕事の鬼ですね……」

「休暇の為だろ?彼女と旅行とか行くんじゃないのか?」
反対側のデスクの相田が何気なくそう返せば、

「あの気合いの入り方は、絶対にそうですよ〜。
吉田さん、年下の彼女に甘いからなぁー。くそ羨ましい…」

相田の隣の席の雄二郎も、彼女と旅行だと確信あり気に頷いた。

「え!吉田さん、彼女には甘いんですか?あの顔で…想像がつかない」

クリスマスも返上で、平丸に付きっきりだった吉田は、平丸に脱走されては、全力で捜査し、毎回居場所を突き止めた。

もはや、執念で連れ戻し見事に〆切りも間に合わせたのだ。

最後は平丸に
「あんた、刑事か?」と恐れられる始末。
確かに漫画家と編集者という関係よりは、まさに犯人と刑事の方がしっくりくる。

その吉田が、彼女には甘いって?唖然とする山久に対し、相田と雄二郎は、思い出した様にニヤニヤと笑った。

「まぁ、顔はともかく!だいぶ前だけど…彼女と連絡がとれない…とかで吉田さん、すげぇー血相変えて飛んで行ったんだよ、ね?相田さん!」


「そうそう。ん?いや、編集部を出るまでは冷静を装ってなかったか?
廊下に出た途端、猛ダッシュして帰ったな」

「ですから、あれは絶対に血相変わってましたよ(多分)
次の日、吉田さんに失恋パーティーしましょう!って言ったら、
別れてねぇーよ!って
超、怒られましたもん…俺。
あの時の吉田さん、編集長に怒鳴られるより怖かった」

「まぁ、雄二郎のせいで編集部内は吉田破局説が流れて、確か副編も噂を信じてたな…その後、本気で吉田に雄二郎が怒られてたっけ…」


「へぇ…二人とも、良く覚えてますね…そんな、(どうでもいい)こと。それって、僕が配属される前の話しですよね?」

感心したような、呆れたような山久に

「「こんな吉田みたことない!!ってくらい面白かった!」」

タッグを組んだ相田と雄二郎の声は息ぴったりと揃っていた。
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