ハリポタ(短編)

□慰めのキス
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「ノエル。ここに居たのか」


湖の外れ、禁じられた森のすぐ入り口。あまり、生徒は近づかないそんな場所だった。

「なに、セブルス。何しに来たの?」

ノエルは、セブルスを見ようともせず素っ気なく返事をする。

「何しに?って。君に、この場所を教えてやったのは、この僕だ!とやかく言われる筋合いはない」

「もぉー。ごちゃごちゃうるさいっ」

セブルスの皮肉は通常運転だが、それよりもノエルの機嫌の悪さの方が勝っていた。

「……何故、僕が怒られるんだ」

全く理不尽だ…と、ブツブツ文句を言いながら溜め息を吐いたセブルスは、ノエルと1つ分距離をとって静かに腰を下ろした。


妙な沈黙が二人の間に流れている。


ノエルの機嫌が悪いのは初めてだった。
どちらかといえば、セブルスの方が機嫌の悪い日が多いのだ。

「なんかあったのか?」

「…別に」

「友達と喧嘩したとか?」

「…別に」

「拗ねてないか?」

「拗ねてるよっ!!」


(別に…って言うかと思ったのに)急に返事が変わり、ビクッと肩を揺らし焦ったセブルスだが、振り向いたノエルの顔をみて、更に驚いた。


「な…泣いてる?」

わたわたと、ノエルとの距離を縮めたセブルスは、彼女の頬を伝う涙に思い当たりを巡らせた。

「…泣いてない」

(明らかなのに、まだ言うか?)

「原因は?やっぱりさっきの魔法薬の授業の事か?」

「………」

(図星か)

「仕方ないだろ?ペアの作業だったんだから」

「なんだか、楽しそうだった…同寮の女の子と一緒に組んで」


「楽しそう?あいつ、千切りとみじん切りの区別がついてないんだぞ?僕、一人で仕上げるのに苦労したんだ。あいつは隣でニコニコしてただけで…だから、あいつとは、誰も組みたがらない。結局、残ったもの同士だったのに?」


「セブルス、楽しそうだったよ」


「楽しくないぞ、必死だった、の間違いだ」


「じゃあ次は私と…」

「それは無理だろ。ノエルは、他の連中が離さない」


「なんでよ?(恋人の)私とは組まないなんて」

「だから、泣くなよ」

「もういい、帰る」

「だから、違うんだ」

「何が違うの?だから、だから、って!!」


言葉と心の歯車が上手く噛み合わなくて、お互いにもどかしい。


「つ、つまり…。ノエルと一緒だと、気になって手元が狂いそうになるから……だよ」

魔法薬が、クラスの誰よりも得意な彼にも、手元が狂うことがあるらしい。

間違って、ノエルに怪我でもさせたら大変だろ。と、決まり悪そうにセブルスは言ったのだ。
予想外の答えにノエルの涙も、さすがに引っ込んだ。

「だから、ごめんっ」


意を決したように、セブルスの唇が、ノエルの頬に触れる。

それは…。

一度きりの、慰めのキスだった。
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