その他

□迷子の高校生
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「ハロー!行くよ?取っておいで……」

「アン!」

ポーンとボールを遠く投げてやると、元気よく走り出した愛犬の後ろ姿を見送り、待ってみる。

秋晴れの爽やかな土曜日の午後。
筋トレがてらハロを連れて運動公園にきていたのだが、いくら待ってもハロはボールを咥えて戻って来ない。

「ん?おかしいな……」

そんなに遠くまで投げたつもりはないんだけど。
ハロの走った方向を追ってみる。
芝生の斜面を下りていくと、だだっ広い芝一面に、ベンチの近くで中学生?らしき男の子2人とハロの姿が目に入った。

「道草してるとは……」

迎えに……と、ちょっと足を進めてから立ち止まる。中学生の1人がハロのボールを持っていた。

「でな、影山がスッとトスをあげて、俺がバシって打つの。視界がパァーって開けたら、ボールが相手のコートに落ちた時……すっげぇ、ぐわあぁぁぁ……ってなんの?分かる?ワンちゃん!」

「アン!」

「すっげー!!見たか?影山!!このワンちゃん、返事した。絶対お前より、お利口さん」

「るっせー!!日向ボゲェ!!」

よしよし、と抱っこされながら撫で撫でされているハロはとても満足そうに尻尾を振っている。
暫し、彼らとハロのやり取りを見守ってあげることにした。

「影山も、触れて見ろよ!このワンちゃんは、絶対大丈夫だって!」

「うぐっ……」

「なっ?ワンちゃん?コイツ顔が怖くて性格も悪いけど、トスだけはスゲー奴なんだ!本当は動物に触れたいんだけど、動物から避けられまくってる、ちょっと可哀想な……?残念な?奴でさ?ワンちゃんなら、逃げないだろ?」

「アン!」

「ありがとう」

元気良くハロが返事をすると、オレンジ色の髪の少年は頬を緩ませた。

「ほら、影山!ワンちゃんは良いって言ってるぞ?」

「アン!」

彼のコミュニケーション能力の高さに驚いた。相手、ハロだぞ?

影山と呼ばれた黒髪の少年は、身体を強張らせぎこちなく、そっとハロに触れると、ハロの方からスリスリと手のひらにすり寄った。多分、ハロなりのサービスかな?

唇をわなわなと緩ませた黒髪少年は、表情までも一変させ、声にならない声をあげ喜んでいる。相当、嬉しい様子だ。

「良かったな〜!影山」

「か、かわっ」

「川?」

「かわいい!!」

「おまえの口から"かわいい"なんて言葉が出るんだな……」

「んっだと、ボゲェ」
「何だよ!本当のことだろー、いっつも眉間にシワ寄せてるくせに〜っ」
「はぁ?もう一度言ってみろ」

すったもんだと、小競り合いを始め、(じゃれあっているようにも見えるが)今が声を掛ける頃合いだろう。
ハロと2人の傍まで歩み寄った。

「君たち、ハロと遊んでくれてありがとう」
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