宝物
□だから、カノジョには敵わない
1ページ/6ページ
「どうして?」
わたしは自分の目を疑った。
愛していると言ってくれた人がわたし以外の人とキスしている。
信じたくない。
これ以上見ていられなくて、わたしはその場から逃げだした。
普段から学校で政行に接触することはなく、今日はたまたま親達がいないから夕食をわたしが作ることになり、何を食べたいのかを聞きに彼がいるであろう演劇部の部室を訪れただけだった。
人影はあまり見られず、彼の代名詞ともいえる青いシャツが見え、声をかけようとした時、彼以外にもう一人誰かがいるのに気づいた。
彼らはわたしが見ていることに気づかないまま、抱き合っていた。
そして、そのまま口付けを交わした。
顔を確認するなんてことはできなかった。
でも、わたしが政行の背中を見間違える筈がない。
「どうしたらいいの?」
涙が溢れてきて、一緒に帰る約束をしていたけれど、わたしは彼を待たずに一人で帰宅した。
夜になれば、顔を合わせなければならないというのに、何もなかったような顔をして政行と一緒に歩くことができないと思ったから…
☆