名探偵コナン
□家庭教師にトライ!〜赤井秀一の場合〜A
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「まぁ、俺よりは、優しい先生だろう?良かったな」
「ハイッ」
自身を畏れの対象と自覚している発言に驚きつつ、全くだ。と頷いて見せる。
「あ、でも……。数学の先生にはまだ会ったことがないので、どんな人か知らないんですよね……」
「名前くらい、聞いてないのか?」
「あ……。」
正直、"沖矢先生以外なら誰でも良かった"。から、両親の説明を聞き流してた。
などとは、口が裂けても言えない。
しかし、運良く知っている情報を思い出した。
「父の知り合いから紹介された方で、多分、大学生なんじゃないですか?
アルバイトをしているらしくて、英語の後の時間が丁度、空いてるからって……だから同じ日になったんですよ!!」
最後の方は興奮ぎみに力説すると、然して興味はなさそうに「へぇ」と言葉を返される。
沖矢先生の視線の先は、 フラップチェストの上に飾ってある、写真立てのようだった。
「君のお父上は、警察官なのか?」
「え、はい。今は警視庁の生活安全課にいます」
幾つか飾られた写真の1つに映るのは、交番勤務時代の父親が、制服姿で幼い私を抱っこしているものだ。
おそらく、沖矢先生はそれを見て話しているのだろう。
「そうか」
納得したように、短めに呟いた沖矢先生の口角が綺麗に弧を描く。
まるで、別人のような仕草に違和感を覚え注視してしまった。
しかし、一瞬だけ見せた表情はすぐに消え、何やら思いついたように沖矢先生は口を開いた。
「よし。残り15分ある。あと一問解いたら、今日は終わりにしよう。そうすれば、数学の時間まで少しは休憩できるだろう?」
「ハイッ!」
いつも時間ギリギリまで問題責めしてくる人物の発言とは思えない。
鞭ばかりで飽き飽きしていた頃に、初めてもらう飴は、十分にやる気を引き上げたのだった。
END