ハイキュー!!
□Love actually
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「あ、大地。これ、合ってるよ?」
「…だよな」
分かりきった物言いに、問題集から澤村へと視線を移した名無しの視界には、澤村の端正な顔が映る。
「名無し……」
ふいに、優しい声で名前を呼ばれ、
あっ…。と、思うより早く名無しの唇に温かなものが触れた。
澤村に確りと腰を抱き寄せられて、名無しが逃げ場を失うと、首筋に吐息がかかる。
一度離れた唇が、再び重なった。
更に深く、深くと唇を澤村に求められ、名無しは呼吸を乱しながら訴えた。
「っ、だ、だいち!!」
「あ、ごめん。つい…。いきなりで驚いた、よな? 」
「あ、あた、当たり前でしょ!!」
クリスマスの序章すら始まってもいないのに、既にクライマックスな局面を迎えようとしたのだ。
名無しが怒るのも無理はない。
「用意したケーキも食べていないのに?」
「うっ。すまん」
「プレゼント交換だってしてないよ?」
「ごめん。いや、本当にごめんなさい」
澤村は、頻りに頭を下げながらも、栗鼠みたいにぷっくりと頬を膨らませた名無しの仕草に、愛しさがこみあげた。
「……ね?もういいよ。大地、頭をあげて?」
澤村が言われた通り頭を上げると、
名無しは、不意討ちのキスには驚いたけど、本気で怒った訳じゃない。と、はにかんだ。
「あのね。バレーをしてる大地の姿は格好良くて、好き。」
「あ、……うん?」
頼りがいがあって、責任感も強い。
部員から信頼されている、厳しくも優しいキャプテン。
落ち着きをみせる大人びた澤村も好きだと、改めて胸の内を明かす名無しに
澤村も僅かに照れながら、聞き入れた。
「……でも。」
「で、でも?」
「バレー以外のところでは、こーゆー風に時には悪ノリもする。普通の男子みたいに、ちょっと子供っぽい大地が……すごく好き」
名無しの胸に募るのも、澤村への愛しさだった。
澤村は、きょとんとしたような顔をして、それからニッコリ笑って、名無しの頭を撫でた。
「ちゃんと、気持ちを確かめてからならいいんだよな?」
「え、ちょっと大地?」
「つまり、時と場所と気持ちの合意?」
「……!大地のエッチ」
「あれ?今頃、気付いたのか」
澤村の言葉に名無しは頬を赤くした。
それでも、澤村が伸ばした手を拒むことはしなかった。
Love actually is all around.
"愛は至るところに溢れている"
これから、……本当のイブの夜が始まるのだ。