ハイキュー!!
□彼の部屋でベッドの下にエロ本を探してみる
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「名無し?」
マグカップを乗せたトレイを持ちながら部屋に入ってきた澤村は、遅くなってごめん、と何事も知らずに柔らかな笑顔で話しかけてくる。
何も言えずに黙っている名無しを、気に掛けた様子で澤村は、テーブルにトレイを置くと、そのまま名無しの隣に腰を下ろし、困ったように口を開いた。
「さっきは、からかって悪かった。名無し、怒ってる?」
名無しは、ソレ以上のことをやらかしたのだ。魂が抜けかけたが、慌てて首をブンブンと横に振り否定した。
「お、怒ってない(怒れない)」
「良かった」
ほっ、と。一息ついて澤村は、マグカップに手を伸ばすと、親切に名無しに渡した。
カップから湯気立つ、甘い香りが名無しの鼻先を掠めている。
「ココア?ありがとう、大地。美味しい」
「ん、名無しはココアが好きだよなぁ……」
口のなかに広がる程よい甘さを堪能しながら、名無しはやっと笑顔を見せた。
美味しそうにココアを飲む名無しの姿を見た澤村も、口元を緩めて買いに行って良かった。と沁々思う。
澤村は「実はさ、」と当たり前のように平然と話を始めたが、ココアを切らしていた為、コンビニまで買いに行っていたのだ。
「大地、外は寒かったでしょ?」
「それくらい、別に平気」
自分の為に、わざわざ澤村を寒空の下、ココアを買いに行かせてしまったことが、申し訳なく思える。
(それに引き換え、自分は……)
そればかりか、名無しが喜んでくれたなら、いいんだよ!と、照れもせずに素で言ってくるのだから、さすがに名無しの良心も痛みだした。
澤村の優しさをいたく感じる。
最後の一口を飲み終えて、カップを置いた名無しは、罪の告白をしようと澤村の方へと顔を向けた。
「あのね、大地…」
「うん?」
言い淀みながらも、名無しの大きな瞳が真っ直ぐに澤村へと、向けられている。
何か言いたげな口元と、瞳は儚げに揺れている。しおらしい態度で名前を呼ばれては、澤村も思わずドキリと胸が高鳴った。
鼻先が触れ合うまで、自然に澤村は距離を縮めた。そっと、華奢な肩に手を添えると、名無しの唇を捕らえるように、でも慎重に…。
あと少しで、唇が重なる。
澤村の胸に、愛しくて温かいものがこみ上げてくる。
しかし。
「大地、ち、違うの……!」
フイと顔を叛けた名無しは、冷静に澤村の身体を軽く押し戻したのだ。
「え?」
現状が理解出来ず澤村は、ピタリと
固まった。