ハリポタ(短編)
□人生相談はティータイムの後で
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「スネイプ教授…」
「ん?何だね?」
「人生相談に来ました」
「ふむ。それは、人選ミスではないかね?人生相談ならば、校長か副校長にでもしたまえ」
「いっ!教授っ…寮監でしょ!?そのまえに、
私の『変人』でしょ!?」
「ほぉ…そうだったのか?」
「ちょっ!スルーしないでよっ。訂正してくれなきゃ困る!!」
「私“の”ではなく“私は”変人の間違いではないか?」
ニヤリと口元を歪め、どこか楽しんでいる教授は変人ではなく、
私の『恋人』なのだけど…
「そっちかっ。もういいよ…。帰るから!帰って寝る」
拗ねた態度で反撃すれば
「あ―…悪かった。聞く。聞いてやるからひとまずソファに座りたまえ」
ちょっと困った様に、教授のあたふたする姿が面白くなって、笑いを堪えて席についた。
「教授、お茶を淹れてくださいね」
「はぁ…?」
「だって!人生相談はティータイム?の後で!って言うでしょ?」
「知らんな。我が輩は、執事じゃないぞ」
「…………知ってるじゃない!」
優秀な執事が夕食の後に謎を解く……。
有名な推理小説のタイトルを拝借したのだが、やはり優秀な私の執事は……じゃなくて教授は察してくれたようだ。
結局、教授は紅茶を淹れてくれて、ティータイムとなった。
「紅茶が美味しい」
「少なくとも、冒頭の人生相談というのは冗談なんかじゃなかっただろう?」
本題を引っ張り出してきたのは教授の方だった。
「あ…はははは、……っ。バレちゃってました?」
流石…鋭い。
笑うしかなくなった私に、
「どうした?」
いつになく、穏やかな口調と、真面目な顔で問う教授は…真剣に話しを聞いてくれるみたいだった。
一度は自分でお茶を濁したくせに…律儀というか真面目というか……。
私は、飲んでいたティーカップを静かに置いた。
****
「私って…特に成績が良いわけでもなく、顔も普通でしょ?スタイルも一般的…これといった取り柄もない。
目標もやりたいことも、そこそこに……
毎日、同じことの繰り返し…。
可もなく、不可もなく……な、生き方しか知らなくて、ときどき…」
「時々?」
それまで黙って聞いていた教授は、
一瞬の躊躇を見逃さず聞き返した。
私は努めて、声がブレないように気持ちを立て直した。
「ときどき、“なんのために生きているんだろう?”なーんてことを考えてしまうことがあるの……」
教授は瞳を逸らさずに、「そうか…」と短く答えて私の正面を見据えていた。
言い切ってしまった事で、私は少しの後悔を感じていた。愚問だと笑われるに違いない。
「人生とは不当なものだが…」
ゆっくりと、考えながら話し出した教授の態度は、馬鹿にした素振りもなく受け止めてくれたことに嬉しくなった。
「誰もがふと、疑問に思い悩むことがある。そんな時は、まず…」
教授が言い淀んで、もう一度、ゆっくり視線を私に戻した。
「?教授?」
「君に方法を教えよう」
「はい?」
意味するものが解らないが私は教授に従うことにした。
「そういうときは、とりあえず…
いったん、大きく深呼吸をして、」
私は、言われた通りに胸いっぱいに空気を吸い込んでふぅっーと吐き出した。
「ゆっくりと、目を閉じて」
教授の声にマインドコントロールされるかのように、自ら視界を暗くする。
「幸せになるために生きてるんだ」
って、思うようにすればいい。
私の耳元近くで、教授が甘く囁いた。
「答えはいつだって…簡単で素直なものだ。
難しく考えてしまうから、見えにくくなってしまう」
尚も、離れない教授との距離に、顔を中心に体の温度が上昇した。
「言葉って不思議だね。教授がそう言うなら、本当にその通りだと思えちゃう」
“幸せになるため”
だなんて予想外の答えだった。
こんなに甘い雰囲気を纏う教授になれなくて
「教授、お茶!!淹れなおすね?」
照れ隠しの為にわざとらしくお茶を淹れなおす私をみて
「ほぅ…今度は、君がメイドにでもなってくれるのかね?」
教授は満足そうに、口元を緩めたのだった。
END
18,07,30