名探偵コナン

□家庭教師にトライ〜赤井秀一の場合〜B
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「ジョンとスージーは、道に迷って穴に落ちた……。」

机に突っ伏したまま、絞り出した答え
は多分、合ってる。

たった1問を解くのに、脳みそをフル稼働させてもう、疲れた。

しかーし!遂にやり遂げた。約束通りこれで今日の英語は終わりだぁ!
数学まで休む。絶対休む!

「正解だ。自力で良くできたな」

ふわりと頭を撫でられて、なんだか調子が狂う。
沖矢先生が優しいなんて、なんだか変だ。

「…………きゅ、休憩したーい」

「ん、それがな。残念ながら……」

いつもなら、スパッと切り捨てる口調の癖に!
珍しく沖谷先生が言い淀んでいる?なんて思った時、
コンコン。背後から控えめなノックのあと、カチャ……。ドアが開く音がする。

「すみません。英語の時間、そろそろ終わりにして頂けますか?少々押しているようですが……」

振り返って確認するのも面倒で、聞いたことのないその声は、今日から始まる数学の先生かな?
申し訳なさそうな口調だった。

「授業時間が終わってたなんて、聞いてない!!」

ガバッと顔を上げて、沖矢先生に抗議する。

「時間のロスは、君が"にらめっこ"なんてしているからですよ。でも、今の問題を最後まで諦めずに解けたじゃないですか」

しれっと、本性を隠しやがった。

まるで別人!!と、告げるべく口を開きかけると、

ハハハ。胡散臭い渇いた笑いのあとで"黙ってろ"と言わんばかりにグイっと両頬を引っ張られた。

「なひふんっ、れす……くぁっ!!」

ぐぐっと全力で、沖谷先生の腕を掴んで離そうとしてもびくともしない。

「はなしぇ!(離せー!)」

「え?なんですか?(誰に向かって言ってんだ?)」

無駄な攻防を繰り広げていると、余裕綽々で沖矢先生は私の後方。つまり、ドアを開けた数学の先生の方に視線を向けて軽く会釈した。

「すみません。授業は終わりましたから」

「そう……ですか」

拍子抜けした様子で、数学の先生が返事をする。
よくよく声を聞いてみると、なかなかのイケメンボイスじゃないか。
数学の先生がどんな人物か、未だ確認出来ないけど。

それよりも、先ほどからなんだか鼻がむずむずする。
ぎゅっと掴んだままの沖矢先生の腕から手を離すと、沖谷先生の両手も頬からやっと離れた。
解放されて、ようやく数学の先生へと向き合う。
まだ、挨拶もしてないし。

「よろしくおねがいしまーす」

勢い良く頭を下げた瞬間、鼻からタラリと生暖かいものが……。

あっ……と思った瞬間。
顔を上げてしまったから、もう為す術がない。
互いに目が会ってしまった。

褐色の肌に金髪。
予想以上のイケメンな先生に思わず目を見開くと、
同じく先生も目を見開いた。
おそらく、私が鼻血を垂らしているからだ。

初対面で今度は鼻血女の烙印を押された気がする。


助けを求めて沖矢先生の方に向き直るとタイミング良く、スッとティッシュを差し出してくれた。
くっ……。ナイスフォロー。

しかし、二人とも肩を震わせている。
うん。笑いを我慢しているのが分かるから、いっそのこと笑い飛ばしてくれた方が傷は浅いのに!!

それに、心の声もただ漏れしてるよ。

鼻血垂らして"よろしくおねがいしまーす"だもんね。私だって、そう思う。


((サマーウォーズ……))


こうして……。
居たたまれない空気の中、英語から数学の授業へと引き継がれたのだった。



END


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