nadir = zenith
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瞬きした一瞬。
何か気持ち悪い。
頭も視界もくらっとした。
奇妙な感覚。
ギュッっと瞑ってた目を開けて、手元に視線を戻す。
何も持ってはいなかった。
「……………は!?あれ!?」
たった数瞬で何があった!?
落としてもない。
どこにもない。
ていうか!!
自分の服装も変わっていた。
ジャージにトレーナーだったのに、木綿の薄い生地の紺色のシャツに茶色のズボン。
革のショートブーツ。
フード付きの外套。
ベルトの左腰にはゲームで見たような長い剣が、ずっしりとした重みを伝える。
右腰にはナイフ。小さな麻の袋を下げてる。
「………………………………なんでだ!?」
着替えた覚えないし!?
しかもコスプレか?
モンハンチックな何か爬虫類っぽい皮でできた硬いRPG風の旅人仕様の皮鎧。
周りの景色も、市街地じゃなく、森とその向こうにアルプスの山みたいな山脈がそびえ、立っているここは草原の中を舗装されてない幅の広い砂利の路が後ろにも前にもどこまでも蛇のようにずーっと続いてる。
「夢オチなわけ、ないか…」
さっきまで普通にコンビニに行ってたし。
歩いてたし。
しかも夜だったのに、今は明るいし、多分昼間だ。
肉まんどこいった…。俺の肉まん!!
頭痛くなりそう…。
吐いたらスッキリするかな………。