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□俺の手に影がさす
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土曜日。午後2時。部活時間。
午前から練習しているが、木兎さんはいつも以上に調子が良いらしい。

いや、良い。誰が見てもとても良い。
クロスもストレートもラインのギリギリへ鋭く決まっている。
だから何度も"あかーしっ!トスくれっ!!"と要求され、それに応えた。
だが………。


「ヘイヘイヘーイっ!!俺最強ー!誰だって撃ち抜いてやるぜーっ!このままだと俺三本の指へ昇格?!てか全国で最強じゃね?やっべー、俺強ぇー!!」


ずっと、この調子なのだ。
ただでさえ煩いのに、今日は一段と煩さが増している。
いつもなら木兎のおだて役をしている先輩方やマネの先輩も、顔に疲労が浮かんでいる。

これはまずい。木兎さんは確かにうちのチームに欠かせないエースだが、だからと言って他の人がどうでも良いわけない。
むしろ他のメンバーが上手くベースを作ってるから、木兎さんは輝けるのだ。

このままじゃベースが崩れかねない…。
チーム全体の状況を把握し、上手く動かすのがセッターであり、副部長である俺の役目。

そして俺は1つ、考えた。


「木兎さん、今日はとても調子良いみたいですね。なら、部内で練習試合しませんか?」


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