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□出会う
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いつもの二度寝もする事なく、静かに目が覚めた。
まだ頭がはたらかない。
ぼんやりと天井を眺めながらやっと此処が自分の部屋ではないことに気付いた。
「ここ…?」
辺りを見渡そうと、起き上がるため体に力を入れる。
「つっ…!」
肩が痛い。
ズキンズキンと心臓でもあるかのようだ。
痛みと同時に記憶も蘇った莢は飛び起きた。もう、痛みなど気にしていられない。部屋に唯一ある扉を見つけると部屋から出ようとドアノブに手をかける。
その瞬間ドアが手前に開かれ、結果莢は頭を打つはめになった。
「雨月っ!! 大丈夫か?!」
「い゛だぁ〜い。」
タイミング良く扉を開いたのは真神くんで、その手には氷枕がある。
「何してんだよ。早くベッドに」「お母さんはっ?!」
莢は彼の服を掴み必死に叫んだ。最後に見た母の姿は血まみれ…莢の心配は爆発寸前だ。
「お母さんなら莢より先に起きて朝食を食べてるよ。撃たれたのは莢と同じ肩だから、命に別状はない。」
「神さま…」
一気に緊張がとけるとトスンと力が抜け、その場に座り込んでしまった。
「元気になったら顔を見に行くといいよ。雨月はとにかくベッドに戻って安静にしてないと。」
「うん…。」
忘れていた痛みが戻ってきて、自分も怪我人だったのだと今さらに気づき、そそくさとベッドにもどる。
「熱が出てひどかったんだぞ。はい、氷枕。」
「ありがとう。」
氷枕の冷たさに少し冷静になった頭で、莢は一番忘れてはいけない事を知らなければならなかった。
「なんでこんな事に?」
「…」
「真神くんは何か知っているんでしょ? 教えて…。」
莢はまっすぐに彼の目を見た。どんな言葉だって取りこぼしたくない。
「…全部説明するから、嘘は言わないから。だから雨月もこれから伝える事、信じてほしい。」
彼の目は真剣で、莢から目を逸らさなかった。莢は信じようと返事をする。
「分かった。」
「始めに、此処は研究所で、考古学の研究をしている。極秘の研究だから誰も知らない。」
「考古学?」
「今から2年前、北海道の漁師が、漁をしている最中に海底にとんでもなくでかい塊を見つけたと報告があった。調査するうちに、その塊が大きな物の一部で、人の手で作られた古代遺跡だと解った。」
「古代遺跡と私に何の関係があるの?」
莢は北海道に行った事すらない。ましてや遺跡など…関係があるとは思えなかった。