モノノ怪

□通り雨
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  ぽつり








         ぽつり







     ぽつり
 











こいつぁ、ついてない


突然の雨とは、困ったもんだ


傘を持っていれば、まだ、良かったのですがね


おや、いきなり話し掛けたせいで、どうやら驚かせちまったようで


なぁに、怪しい者ではありませんぜ


俺は、ただの薬売り、ですよ


こうして貴女と雨宿りをする事になったのも、“(えにし)”というもの


よければ雨が止むまで、ここで話しでもしていませんか、ね


急な雨だ


きっと通り雨に、違いない


そう長くも、降ってはいないだろう


それに、こんなにも綺麗な娘さんと雨宿りなど、そうそう出来るもんじゃあ、ありませんからね


“くすっ”


そんなに動揺せずとも、いいじゃあないですか


とはいえ、頬を染めた貴女も随分と可愛らしい


……


おや、嘘とは心外ですね


俺は、嘘は吐きませんぜ


嘘かどうか、俺の目を見て頂ければ、分かるかと


どうせなら、もっと近付いてみては、どうですかい?


そう、こんなふうに―――






“くつり”



どうやら、悪戯が過ぎてしまった様で


どうも貴女の、困った顔や恥ずかしげな顔を、見たくなってしまうらしく


貴女を怒らせるつもりは、無かったのですが、ね


こいつはうっかり、うっかり……





ほぅ、俺の事を話して欲しい、と


ですが、俺は先刻言ったように、只の薬売り


何も面白い事など、ありはしませんよ





それよりも、そうですね




出来れば、貴女の事を


お聞かせ願いたく、候








この雨が、止むまで







雨が止んだあとも



雨の名残を感じながら


時間の、許す限り―――





















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