someday
□One fine day
1ページ/3ページ
カツン
カツン――
カツン―――…‥・
柔らかく祝福の光を振らせるは色取り取りのステンドガラス
リンゴンと悠然と響き渡るは鐘の音
そして教会の中央を染めるは深紅のバージンロード
その上をユナが純白のドレスを纏い美しさを引き立たせる化粧の施された顔を隠すベールを揺らしてゆっくりと歩み行く
それを見守る多くの参列者達は皆彼女に見惚れ
そして見たことも無い幸せそうな笑みを浮かべる花嫁を迎えるのは
すらりとした長身の、同じ様に白を纏った柔らかな微笑みを浮かべる新郎
それは天才的な頭脳と類を見ないシスコン兼ある意味天才発明家でもあり教団の驚異でもあるコムイ・リーその人で
温かな光と視線に包まれ今まさに式は始まった
コムイは一歩一歩自分へと近付いてくるユナに手を差し伸べる
二人の手と手が重なる
想いを込めた互いの視線と視線が交わる
朗読される聖書の言葉を聞いている最中も
誓いの言葉を交わす最中も
二人は静かに寄り添っていた
「では、誓いのキスを」
神父のその言葉を合図にユナのベールが優しくふわりと捲られ、曝された彼女の肩に大きな両手が乗せられる
そこからじんわりと心地よい温もりが伝わってきた
その二人の醸し出す雰囲気に
そしてユナの表情に、参列席からは自然と羨望と魅了の溜め息が漏れる
そんな、より一層魅力的な海にも似た濃紺の瞳に映るコムイの顔が、徐々にゆっくりとユナに近付き伏せられる瞼
そして赤く色付く柔らかな唇が
ついにそっと優しく触れ合った
それは永遠を誓う
目に見えぬ絆
漸く訪れた平穏を共に歩む事を願う
永久の約束
しっとりと響くパイプオルガンの音色をBGMに二人は顔を離した
そこに在る表情は今誰よりも幸せそうなものに間違いはないだろう
深い海の色に映るは愛しき人の笑顔だけ
誰よりも大切な人の眼差しだけ
溢れ出す幸福感と唇に感じた温もりに
ユナは、はにかむ様に綺麗に微笑んだ―――
……
………
……………
「「「「て、それは駄目だぁああぁあ!!」」」」
白を纏い伏し目がちに歩くユナを想像し様々な表情を浮かべていた科学班メンバーだが、その彼女の先にいたコムイの姿に皆揃って声を上げた。
そして思い描いたシーンを無かったものにしようと、変な汗をかきながらぶんぶんと大きく頭をふる。
「む、君達その反応は僕に対して失礼じゃないかい?」
「いやいやいやユナのウエディングドレス姿は捨てがたいですけどその相手が室長ってのは何かしっくり来ないって言うか危ないっていうか」
「一体僕の何が危ないっていうのさ!失礼しちゃうなぁ、もうっ」
「とにかく、ジョニーの今の発言は無しだっ、無し!!」
「つか、ジョニーも変な事言うんじゃない!!」
「うっ、ご、ごめん」
ぷくっと頬を膨らませ納得いかないとばかりに反論するコムイ。
何もそこまで否定する事などないではないか!と。
そして今の想像をする原因を他意はないにしろ作ってしまったジョニーは、メンバーに怒られ小さくなっていた。
「……?みんな怖い顔してどうしたの?」
そんな時、部屋に訪れた小さな人影一つ。
「ああ、リナリーか」
「リナリー聞いてよ!みんな酷いんだよ!?僕の事危ないとか言ってさぁ」
ぷんすか怒りつつコムイは愛しいリナリーを出迎えながらここぞとばかりに不満を訴え始める。
どうやら一同そろっての反応がよほど心外だったらしい。
しかし今来たばかりのリナリーは状況が飲み込めず、兄の気迫に押され曖昧な笑顔を浮かべながら小さく首を傾げた。
一体何の話しをしていたのだろうか
とはいえ何と説明すれば良いのかと白衣の集団は視線を泳がせる。
仮にもコムイはリナリーの兄であり、あまりコムイの事を悪く言うのは躊躇われこの場合どう言うのが当たり障りないのか。
「……」
「「「「……」」」」
「……っ」
こういう事は班長に任せます!と言わんばかりの同僚の無言の視線を受け口の端を引きつらせたリーバー。
何で俺なんだ!
「……あー、いや実は」
しかしこのままでは埒があかないと判断したのか、仕方がないとばかりに何処か歯切れ悪くリーバーは口を開いた。
.