Short Story

□竹馬の友
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相葉さんは俺をジロジロと見ながら、絶対痩せたよ、痩せてないわけがないもん、とか何とか言っている。人をそんなにジロジロ見るのはどうかと思う。

とりあえず会話が一旦終了したのだろうと思っていたら、突然、腰に相葉さんの腕が纏わり付いた。さわさわと身体に手が触れる。


「なっ、にしてんの!?」


いきなりの事にびっくりして、思わず声が上擦る。高めの自分の声が楽屋内に響き渡って恥ずかしい。
慌てて楽屋内を見渡すと、翔ちゃんが少し驚いたようにこちらを見ていた。俺と目が合うと、翔ちゃんは微笑ましそうに表情を緩ませた。
大野さんは翔ちゃんの影になっていてどんな顔をしているのか分からない。こちらを気にしているのかも分からない。


「ほーら、やっぱり痩せた!細いよ!」


腰を触りながら相葉さんが何度も頷く。相葉さんを引き離そうとしても馬鹿力のせいで全然ビクともしない。


「いいから、とりあえず離せ!」
「ニノが認めるまで離しませーん!」
「……それを言うなら、あんたの方が細いでしょうが。あんたの足の細さとか、まじで恐ろしくなるレベルですからね」
「俺はちゃんと食ってるからいいの!ニノは元々少食だから心配になんの!」


ふざけるようなトーンから一段階落ちる。そうやって心配そうに見つめられると、何も言えなくなる。

昔からこの人はそうだ。
こんな瞳でよく俺の事を見ていた。


「ねぇニノ、ちゃんと食べてよ」


今まで軽かった言葉に重みが伴う。
いつも笑っているくせに、辛い事があっても笑っていようとするくせに、今この状況でそんな悲しそうな目をするのはずるい。


「……分かりましたよ。ちゃんと食べます、相葉さん家で」
「えっ?食いに来んの!?」
「当たり前でしょ」
「なんだそれ!まぁいっか!たくさん食べさせるからな!」
「んふふっ、俺少食だからそんなに食えないけどね」


相葉さんの優しさは太陽みたいで。捻くれた俺の心をふわっと溶かしてくれる。俺には無い輝きだから、俺にとってこの人は必要なわけで。だからこそ、こんなにも長い間一緒にいられているんだと思う。

ありがと、なんて今更照れくさくて言えないけど、きっとこの人には言わなくても伝わっているんだろうな。
だって、こんなに幸せそうに笑ってんだもん。ちょっとバカみたいに見えるけどね。

 
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