Short Story
□暇潰しの告白
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「翔ちゃん、私の事好きですか?」
突然視界を埋め尽くすように現れた人物に思わず身体が固まった。思考も全く追い付かない。
分かった。一旦、整理しよう。
白くて透き通るような綺麗な肌。
色素の薄いために茶色く見える瞳。
微笑みを讃えている薄い唇。
目の前の人物はそれらを惜し気も無く主張しているのだ。主張というよりも、自分の魅力を曝け出している。
普通の男だったら嬉しいシチュエーションだろう。普通の男だったら、というか、普通の状況だったら、という条件付きだが。
俺の思考が追い付かない原因は、目の前の人物が男であるという事実だ。加えて、俺と同じグループのメンバーの一人なのである。
つまり、冒頭の台詞は明らかにおかしい。普通の男性グループ内での会話としては異常だ。
「えっと、とりあえず、どういう事?」
まずは落ち着かなければ。まともな話が出来るはずも無い。相手がまともな話をする気があるかどうかは置いといて。
「どういう事って、そのままの意味だけど?」
何かおかしい所があったのか、と言わんばかりの声色に頭を抱えたくなる。ついでにこの場から逃げ出したくなる。
おかしいも何も、おかしい所しか無い。
楽屋に来た俺に対して真っ先に投げかけられたのがさっきの言葉だ。挨拶よりも先に聞くような事か。
大体、同じグループのメンバーで、その前に同性である俺に、何故そんな事を聞くのだろうか。全く理解出来ない。
「……もう一回、言ってもらえる?」
「え?仕方ないなぁ。一回だけだよ?
翔ちゃんは、俺の事、好き?」
さっきよりも大分砕けた言い方に、しかし俺の思考は固まったままだった。
聞き間違えでは無かったようだ。残念だ。
いつもの悪ふざけなのだろうか。それとも、何か違う意味でもあるのだろうか。