Short Story

□scene
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4人のそれぞれの笑い声が耳に入ってきて、夢から引き戻された。かずの膝を枕にして寝ていたおれの頭はまだはっきりとは覚醒していなくて、目を開ける事さえ億劫だ。このまま目を閉じていようか。そしたら、また寝るだろうけど。まぁ何かあったらすぐ起こしてくれるだろう。

薄目を開けて辺りを見渡す。かずの右隣には相葉ちゃんがいる。相葉ちゃんの向かいには翔くんがいて、翔くんの隣には松潤が足を組んで座っている。その全員が楽しそうに笑いながら話して、おれが起きた事には気付いていないらしい。


それにしても、なんとも微笑ましい光景だ。
こうしてこんな風に仲良く笑い合える時が来るとは、あの時は思ってなかった。


懐かしい夢を、見ていた。
あの日、デビュー会見を行った時の光景だ。

15年前、あまりにも突然デビューが決まって。それはJr.にとっては物凄く喜ばしい事だけど、当時辞めようと思っていたおれには、それはただの重圧でしかなかった。
何でおれなんだ。辞めたい。そんな後ろ向きな思いでいっぱいだった。

あまり詳しく知らない奴といきなり今日から同じグループのメンバーだと言われても、おれにはどうでもよかった。
だけど、隣でおれと同じ戸惑いを抱えて、それでも笑おうとしている奴の手が震えているのが見えたから、なんとかやっていこうと思えた。

そいつの手を握ってやると、自分の手も震えている事に気付いた。全く先の分からない闇の中へ放り出される感覚は、おれの意思とは関係無しに身体を震えさせていた。
多分、そいつにもおれの震えは伝わっていただろう。だけど、そいつは少しだけ安心したように、静かに微笑んだのだ。

そいつ――かずが今こうしておれの隣で屈託無く笑っているのだから、人生分からないもんだ。

距離を測るようによそよそしく笑っていたおれ達は、いつの間にかこんなにも仲良く笑い合えるようになった。
どうでもいいと思っていた場所は、今では掛け替えの無い宝物になっていて。誰にも譲れない。譲らない。

そろそろ目を開けて起きてみようか。
大好きなみんなの笑顔がちゃんと見たい。
そして、誰よりも大切なかずの隣で、この先もみんなと一緒に笑っていたい。



((この景色をずっと見ていたい。))



End.

 
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