Short Story
□無意識の感情
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収録が終わって、スタッフへの挨拶もそこそこにかずの隣に向かう。かずはスタッフやゲストの方と談笑しながら、すぐにおれの姿を認識して、おれ以外には分からないくらい微かに笑った。
かずはどんな時でもおれの動きに真っ先に反応してくれる。それだけ気にしてくれているんだろう。そんな事が凄く嬉しい。
かずの隣に来たおれに、スタッフやゲストの方が声をかけてくる。おれは適当に頷いて笑うだけ。そんなおれを呆れたようにかずが横目でおれを見る。
……そんな目で見られても困る。
元々話すのは得意じゃないんだから。
そう言ったら、アイドルでテレビ出てるんだから、苦手とかに関わらずもう少し喋るようにしなさいよ、とか何とかかずは言うんだろう。
でも、おれが話さなくてもかずがおれに話を振ってくれて、おれの声を拾ってくれるから。やっぱりかずは凄い。
スタッフやゲストの方との話が終わって、かずがおれの姿を真正面から捉える。
楽屋に戻ろ、と短く言うと、かずは小さく頷いて歩き出した。おれもそのすぐ隣を歩く。
どうしてもかずの曝け出された綺麗な足に意識が向いてしまう。気にしないように言い聞かせるけど、それはどうやら無駄らしい。
「疲れたの?」
珍しく心配を前面に押し出して聞かれた言葉に首を傾げる。そんなに疲れたように見えるのだろうか。
「そうかぁ?そんなに疲れてねぇぞ」
そりゃ収録をしたのだから疲れていないわけではないけど、そんなに心配される程疲れているわけではない。
「だって……なんか機嫌悪そうだよ」
やっぱりかずは凄い。おれのあまり変わらない表情を見てそこまで察する事が出来るのは家族かかずくらいだろう。