Short Story

□赤い独占欲
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何故、こんな事になったのか。
そんな事を考えた所で現状がどうなるわけでもなく、ただ時間が過ぎていくだけだ。

痛みの走るそこに視線を向けると、先程とまるで変わらない状況に溜め息を吐きたくなった。


簡単に説明すると、智が両手で俺の腕を掴んでいるわけで。どこにそんな力があるんだと思うくらい、腕を掴む力は強い。


どうしてこうなったのか。さっきから何度も同じ疑問が浮かんでは溜まっていく。

突然俺の家に来て、どうしたのかと理由を聞く前に、俺の腕はこの人に掴まれていた。
全く、この人の行動は読めない。
何を考えているのか分からない。


「痛ぇか?」


ずっと黙っていた智が口を開く。その力強い手とは不釣合いな呑気な声に、身体の力が抜ける感覚がした。


「痛いに決まってんでしょ!」
「ん〜悪ぃ」


謝るわりには手を離してくれない。多分、俺の腕は軽くうっ血してんじゃないかと思う。
俺は元々肌が白いからそういう跡は目立ちやすいのに、この人はなんて事をしてくれてんだ。


「悪いと思ってんなら、そろそろ手を離してください!!」


この人の好きにさせておいてあげようと思って我慢してたけど、そろそろ俺の腕がさすがに可哀想だ。


「ん、分かった」


すると、あっさりと俺の腕を離してくれた。もしかして最初から強く言っておけば離してくれていたんだろうか。それなら、もっと早めに言っておけばよかった。

 
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