Short Story

□偽りの仮面
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いつだって、大野さんは大人だ。
落ち着いていて、余裕がある。

俺はと言うと、誰かが大野さんをかっこいいと言う度に、凄いと褒める度に、その人が大野さんを好きにならないかと考えて嫉妬をしてしまう。前にオンエアで自分の顔を見た時、あまりにも露骨な自分の表情に苦笑してしまった程だ。


大野さんが俺の事をちゃんと想ってくれているのは分かっている。だけど、それを確かめたくなってしまうのは、多分、不安だからなんだろう。
俺は男で。どうしたって大野さんに対して引け目を感じてしまうから。

だから、ちょっと仕掛けてみようか、と思い付いたのが昨日の事。少しは良い反応が見られるといいんだけど。


少し重たい気持ちを隠しながら楽屋に入る。中には、相葉さんを除いた全員がいた。
真っ先に俺に気付いた翔ちゃんが、見ていた新聞から視線を逸らし、おはよ、と声をかけてくれる。その声に反応して、潤くんを俺を見る。大野さんは無反応だ。


「おはようございまーす」


出来るだけいつも通りを意識して、いつもと同じように挨拶をする。
翔ちゃんに近寄ると、翔ちゃんは優しく微笑んだ。その優しい笑みに重たかった気持ちが少しだけ軽くなる。


「ニノ、もしかして眠いの?いつもよりぼーっとしてるよ」


まるで我が子を見守る母親のような温かな視線に、一気に緊張が走る。勿論、それを悟られるようなヘマはしないけど。
いくらいつも通りにしようとしても、やっぱり意識している分、いつも通りには出来ないもんだ。


「ん、ちょっとね」


別に眠いわけではないけど、とりあえず話を合わせておこう。その方が自然に見えるだろう。


「ちゃんと寝てんの?」
「それなりに寝てますよ」


探るような翔ちゃんの視線から目は逸らさずに意識だけ逸らす。翔ちゃんは少しの変化でも勘付かれる可能性がある。だから、目は逸らさない。笑顔を絶やさない。


「にしても、今日も肩撫でてますね〜」


おどけたように言うと、うるせっ、と翔ちゃんが拗ねたように口を尖らせた。
よし、気付かれなかったっぽい。

 
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